Red Bull Music Academy Weekender Opening Party

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  • RBMA Weekenderのオープニングを飾るのは、INNERVISIONSなどのレーベルで活躍するアーティストHenrik Schwarzの楽曲をオーケストラで楽しむという”Henrik Schwarz Instruments”。さらに会場が築地本願寺ということで、歴史やジャンルの枠を超えたこれまでにない体験を約束するような組み合わせだ。会場に着くと、プロジェクションマッピングで彩られた本願寺が眼前に現れた。否が応にも期待を煽る演出だ。静謐で厳かな雰囲気に包まれた本堂で、客席は寺院の美しさに圧倒され、張りつめた空気が漂う中、この日のために日本人のみで結成された若き27人のオーケストラによって“Marvin”や“Walk a Mile”といった彼の代表曲が演奏された。 観衆の中には、生音のオーケストラを聴くという行為に対する戸惑いも少なからずあったようだ。そのため、2、3曲目の終わりまでは拍手をしていいのかすら迷っているほどであった。楽器そのものの響きを聴くのという行為も、スピーカーなどの音響機材ありきのエレクトロニックミュージックとは正反対と言えるもので、新鮮な感覚はあった。その一方で、筆者が座っていた前方の座席ですら、ややコンパクトな鳴りだなと感じたのも事実だ。挑戦的な企画ではあったと思うが、コンセプトが先行しすぎて、若干受け手となるオーディエンスとの間にズレがあったのは否めないだろう。かつてオーケストラを表現の技法として用いたエレクトロニックミュージックのアーティストは存在したが、例えばJeff MillsがリズムマシンやDJセットを用いていたのとは違い、Henrik Schwarzはステージに立たずに、アレンジと監修に徹し、オーケストラのみの音で挑んだ。そうすることによって、彼がエレクトロニックミュージックのフィールド外でも優れた音楽家であること、そして彼のトラックの多くがオーケストレーションのアレンジを施しても機能するほどの豊かな音楽性を備えていたことが証明された。忘れ得ぬ体験となるような内容の濃い1時間であった。 (C) Red Bull Content Pool
RA