Stephen Encinas - Disco Illusion

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  • 今月、時間の合間を縫ってGilles PetersonとJoey Negroにインタビューを行った。その2つのインタビューで共に話題にあがったのがStephen Encinasの"Disco Illusion"だった。両者共に非常に素晴らしい作品であると語っている。PetersonやNegroのような年季の入ったディスコオタクが太鼓判を押しているということが、このトラックの全てを物語っていると言っても良いだろう。 しかし、話はそれだけではない。"Disco Illusion"には驚きのストーリーがある。このシングルは1979年にトリニダード・トバゴにて地元のミュージシャンによるバンドによってレコーディングされ、謎の多いレーベルKalindaからリリースされてる。その音楽はR&Bのボーカルと西インド諸島のベースが融合した稀な例で、コズミックな即興伴奏によって大気圏を浮遊しているかのような感覚を覚える。しかし、この作品には1つだけ問題があった。このリリースを流通に乗せることが出来ず、結果、誰にも聞かれることなく終わってしまったのだ。そして昨年、トリニダードの倉庫にて1箱丸々残っていたレコードが見つかり、Invisible City Editionsのスタッフが本作を再発することになったのだった。 B面に収録された"Lypsco Illusion"も同様に素晴らしく、シンセ音が鳴り響き、間断なく刻まれるビートと、今にもとろけそうなスティールパンと組み合わされているのが特徴的だ。こういった作品を探しているDJが相当な数、存在していることを考えれば、本作のクオリティはもっと早くに話題になっていてもおかしくないと思うだろう。しかし、それには理由がある。「Disco Illusion」はStephen Encinasが生涯で唯一残した作品なのだ。他には、今年、傑作バージョンを収録し再発されたMichael Boothmanによる"What You Won't Do For Love"に彼の名がボーカルとしてクレジットされているのみだ。近年で最も素晴らしい再発であるだけに、彼の音楽がこれまでずっと埋もれていたという事実は本当に残念に思う。
  • Tracklist
      A Disco Illusion B Lypso Illusion
RA