Kemper Norton - Lowermoor

  • Share
  • Kemper Nortonはイギリスの南海岸に居を構え、フォークミュージックをこよなく愛する男だ。しかし彼が作るエレクトロニックミュージックは他の何よりも最も丹念に作り上げられているものだ。Nortonが生み出すコンセプチュアルな作品はしばしば、彼の住む場所、自然といったものをテーマとしているが、バンクーバーの新鋭レーベルMore Than Humanからのリリースとなる本作で彼がフォーカスしたのはコーンウォールの水道局であるサウスウェストウォーター(SWW)だ。「Lowermoor」では1988年にコーンウォールのキャメルフォードで発生した汚染水問題に焦点をあてている。それは、サウスウェストウォーターから一切の指示や警告が無いまま、少なくとも20,000人の人々が汚染水に晒されていたという大失態のことである。その結果、本作に収録された4つのトラックは気味の悪い嘆き声に満ちており、単なるEPというよりも物語のような体裁を成している。 "SWW Circular"の核となる部分は不安感に満ちている。浮遊するようなドローンサウンドがこのスキャンダルについての会話の断片と共に奏でられ、下水溝から水が流れ出しているかのようなサウンドのかけらが鋭く鳴り響く。その後ノイズの壁となって辿り着くのは"AL 2"、"SO 4"の比較的静かなトラックだ。ピアノ、シンセ、そしておそらく弦楽器による音によって生み出される流氷のようなメロディが両トラックにて用いられている。最後に収録されている"SWW Anthem"では落ち着いた声が淡々と何度も繰り返される。「Drink down our clear blue water(私達の綺麗に澄み渡った水を飲みましょう)」「Wash your dreams away(あなたの夢を洗い流しましょう)」と。その声の奥では深い悲しみ、喪失感、不信感に溢れるシンセ音がはためいている。こうしたサウンドは若干ながら非情に聞こえるかもしれないが、Nortonの手腕によって生まれる気品がそこには漂っている。
  • Tracklist
      A1 SWW Circular A2 AL 2 B1 SO 4 B2 SWW Anthem
RA