Objekt - Objekt #3

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  • 自身のキャリア初期に始めたセルフレーベルによってObjektは自分の首を絞めているのではないかと思う人が居るかもかもしれない。"Unglued"や"Cactus"で示した強烈なインパクトによって高い評価を獲得したことを考えれば、その後の舵取りが困難になるのは当然のことだ。ベルリンで活動するこのプロデューサーが今年、比較的静かだった理由の一部はこのことで説明できるかもしれない。例えば、ストイックなエレクトロトラック"Shuttered"において、見事なスキルによって衝撃をもたらしてはいるものの、果敢に前進しようとしているというよりも、過去の成功例に沿って、それを強化しようとしているように感じた。 "Agnes Demise"は、ObjektことTJ Hertzの作品の中で最も激しく疾走感のあるトラックで荒々しく新たな領域を突き進もうとしている。Objektが手がける多くのトラックでは、彼の手によるものだと分かる個性や要素を組み合せたものが過激で新しい形で吐き出される。その点において、このトラックを昨今のインダストリアルテクノの流行に対する彼からの返答として見てみると、非常に魅力的だ。期待や不安が入り混じった激しい衝動が曲中の大半を占め、骨まで砕かれるかのような強烈なサウンドが中盤に展開される。ブレイクの部分では、そのサウンドはノイズの嵐へと引き伸ばされ、フィードバック音と共にトラックを掻き乱していき、ほどなくしてサウンド全体が痛ましいほどに粉々に砕かれた後、急速に元のリズムパターンが再構築される。やり過ぎることのない締め時というものをHertsがいかに理解しているのかということが分かる瞬間だ。 "Fishbone"の比較的単純かつ明快である点は助けられたような気分になる。滑らかなエレクトロビートは"Shuttered"のそれと同じだが、よりファンキーで陽炎のようなシンセが光をもたらしている。これまでの作品と同様に、謎に満ちた要素がこのトラックには潜んでいる。奇妙かつ鼻にかかったようなボイスサンプルと拷問のように攻め立ててくる重低音、そしてSFのような鮮烈なブリープ音のことだ。控えめにスタートするものの、5分を過ぎると、知らぬ間に自分が強烈に締め付けられていることに気付くだろう。
  • Tracklist
      A Agnes Demise B Fishbone
RA