- StrategyことポートランドのプロデューサーPaul DickowはシカゴのKrankyとブリストルのダンスミュージック基地Idle Handsの両レーベルから音楽をリリースする唯一のアーティストであり、今後においても彼以外にはいないと断言しておそらく問題ないだろう。前者のレーベルからは霞んだアンビエントポップのアルバムを2枚仕上げ、幅広いアプローチを持った音楽性とBasic Channelの影響を受けたダブ風景によって広く知られている他、彼はダンスとポップの形式を持った多くの模様を手際よく融合してきた。最近、100% Silk、Endless Flight、その他のレーベルからの12インチではダビーなハウスにおける音楽性を披露している一方、昨年リリースされたプロジェクトと同名のLPは、からかったようなポストパンクディスコなスタイルの優良作品だった。
"Return From The Stars"はDickow作品において最も冒険的なものかと言われれば決してそういう訳では無いが、最も丹念に作られた作品の1つであることは確かで、同時にIdle Handsの音楽性にも素晴らしくフィットするものである。本質的に、本作はダブテクノであり、低域をふんだんに備え、豊かに広がる暗闇がそこにはある。Dickowは綿密なエディットを通じて、Rhythm & Sound的なクリシェの罠に陥らないようにしており、遠くで鳴り響くアコーディオンがトラック後半部を舐めていく様はクラシックを知るものならではの素晴らしい手法だと言える。一方、PeverelistはそこへUKらしさを持ち込んだ。流星のようなコードワークがこのリミックスの印象を作り上げているとしても、彼の手による硬質な2ステップの枠組はかつてのEl-Bのプロダクションからヒントを得たかのように聞こえる。これは煙を燻らす宇宙の音楽だ。もしかすると、最近のLivity SoundにおけるPev作品の副産物と言えるかもしれないが、それでもこのリミックスは（星を散りばめた）Pev作品群の中で光輝くものである。
Tracklist A Return From The Stars
B Return From The Stars (Pev Jerky Remix)