Pioneer - DJM-750

  • Published
    Nov 11, 2013
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  • Released
    June 2013
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  • PioneerのDJMシリーズは、その長年の歴史とクリーンなサウンド、そしてテンポに同期するエフェクト類の評価から、数多くのDJブースに設置されている。モデルが新しくなるごとに新しい技術が導入されるDJMシリーズだが、今回のDJM-750ではエフェクト類が増えたほか、USBポートが導入されたため、ミキサー本体をサウンドカードとして扱い、各チャンネルの入出力をPC側と行うことが可能になった。この機能によって、DJMシリーズはDJのみならず、プロデューサーやラップトップのライブアーティストなどにも使用されることになるだろう。 DJM-750は4チャンネルミキサーで、各チャンネルはRCA2系統とUSBサウンドカードによる入力が可能となっているが、RCA2系統に関しては、チャンネル1と4がPhonoとLine、チャンネル2、3はLine2系統となっている。筆者の希望としては全チャンネルがPhonoとLineに対応してもらいたかったが、この部分が商品の価値を下げることにはならないだろう。尚、各チャンネルはクロスフェーダーへのアサインも可能だ。DJM-750で素晴らしいと思える機能は各チャンネルのEQで、これは通常のEQ(レンジは-26dbから+6db)か完全に周波数帯域をカットするアイソレーターのいずれかを選択するようになっている。フロントパネル左上部にはマイク入力があり、XLRもしくは1/4インチに対応しており、またマイク部はオン/オフボタンと2バンドEQ(High/Low)が備わっている。尚、マイクにはエフェクトのアサインが可能だ。マスターアウトの端子はXLRかRCAで、ブースアウトとレコードアウトはRCAのみとなっている(ブースアウトもXLRのバランス出力に対応していた方がよりプロ仕様と言えただろう)。またコアキシャルデジタルアウトと1/8インチCDJ用スタートコントロール端子も備わっているが、これは今まで使われているのを見たことがない機能だ。 DJM-750のUSBサウンドカード用ドライバはほんの数秒でMacbook Proにインストールすることができた。ドライバに付属しているDJM-750 Setting Utilityはシンプルだが便利なユーティリティソフトで、入出力の管理が可能となっており、各チャンネルのポストフェーダーの信号を始め、レコードアウト、マイク、クロスフェーダー、タイムコードも出力としてDAW上へ送ることが可能だ。尚、サンプルレートは44.1kHz、48kHz、96kHzとなっている。筆者のPro ToolsではPlayback EngineダイアログをクリックするだけでDJM-750がサウンドカードとして認識され、実に簡単な形でヴァイナルのサウンドをDAW上に送ることができた。尚、チャンネル1と4を使えば、2枚のレコードを同時にレコーディングすることが可能になる他、DJミックスやライブパフォーマンス用としては、各チャンネルを個別にレコーディングしたり、マスターアウトのサウンドをDAW上で更にエディットを施したりすることが可能だ。ちなみにReason 6.5では4チャンネルすべてが1台のターンテーブルをサウンドソースとして認識するという奇妙な問題が発生したものの、クリック1回で解決できたため、結果的に簡単に認識させることができた。Reasonのインプットを使ったサンプリングは非常にスムースで、ターンテーブルからMPCへのサンプリングを想起させた。DJM-750では様々なシンセや機材を各チャンネルに簡単にアサインし、それらを自由にミックスしたり、EQやエフェクトをかけたりすることができる。当然Ableton Liveや他のDAWソフトでも同様に接続と作業が簡単に行えるはずだ。またTraktor Proのアウトプットも簡単にミキサーのチャンネルにルーティングすることができた。残念ながらミキサー自体はTraktorに対してそこまでフレンドリーな作りにはなっておらず、ヴァイナルやCDによるコントロールではNative Instrumentsのインターフェイスが必要となる。 エフェクトのセクションにも新機能が搭載されている。まずSound Color FXセクションにはサウンドにディレイやリバーブ的な効果を加えるブーストボタンが搭載されたため、Noise、Jet、Crush、Filterの効果がより強力になっている。尚、Sould Colorノブは回すスピードが速いほど、エフェクトが強くかかる仕様になっている。Beat Effectはお馴染みのエフェクトの他に、ターンテーブルを停止した時のような効果が得られるVinyl Brakeが追加された。エフェクトは各チャンネルやクロスフェーダーの両サイド、マイク、そしてマスターアウトにアサインすることが可能で、各エフェクトはヘッドフォンでプレビューすることも可能だ。またバックパネルには1/4インチのセンド/リターンが備わっているため、外部エフェクトの追加も可能になっている。ちなみに内蔵エフェクトはどれもどこかで聴いたことがあるようなもので、DJセットで複数回使うと飽きられてしまう可能性もあるが、そこはDJの腕次第という所だろう。 DJM-750はクラブ用DJミキサーとしては申し分のない出来だが、この機材の特徴はスタジオでもライブでも使用できるというその汎用性にある。制作を行わないDJにとっても、ミックスなどをレコーディングする時に機材を追加せずに簡単にレコーディングを行えるため、理想的な機材と言えるだろう。またラップトップのライブを行う人もサウンドカードや典型的なミキサーを使用する代わりにゲイン、EQ、エフェクターが備わったコンパクトなこの4チャンネルミキサーを使用すれば十分だろう。 Ratings: Cost: 3/5 Sound: 4/5 Ease of use: 3.5/5 Versatility: 4/5
RA