The Do-Over Tokyo

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  • 残念ながら筆者はロサンゼルスの夏を満喫したことがないため、「LAの夏を感じた」と言ってしまったらただの知ったかぶりになってしまうが、雲1つない晴天、10月らしくない陽気、丁度良いそよ風というすばらしい条件が揃った今年のDo-Over Tokyoは、東京湾に突如現れた楽園であったことは間違い無い。2005年の夏からロサンゼルスで開催され、近年は世界中の都市でも繰り広げられている、日曜日午後の屋外パーティーDo-Overは、入場無料という点、そして出演するDJが事前に公表されないという点が大きな特徴だ。事前に解っていることは、シークレットゲストは世界トップクラスのDJであること、会場でDo-Overのスペシャルなサングリアが味わえること、そして何より、グッドミュージック、グッドヴァイブスで溢れたパーティーになるということだ。 Photo credit: Taro Mikami 今年のDo-Overの開催地は、晴海埠頭にある晴海客船ターミナルであった。広場の端に設置されたDJブースのバックにはキラキラと光る海面が広がり、遠くには豪華客船やレインボーブリッジ、フジテレビのビルまで見渡せる。夏の再来かと思うほどの日差しの強さと暑さもあり、会場はサングラスの男性やタンクトップの女性だらけであった。協賛を行ったPioneer DJのブースもあり、今回DJ陣が実際に使用していた最新ミキサー、DJM-900SRTの実機を試すことができるようになっていた。そして、今回招聘されたミステリーゲストは日本からDJ Kiyo、Force of Nature、そしてアメリカからDJ Dayと、なんとTony Touchであった。Tony Touchといえば90年代から活躍し、伝説のDJとして地位を築いたヒップホップ界の紛れも無いパイオニアの1人だ。 Photo credit: Taro Mikami DJ Kiyo、DJ Day、Tony TouchといったDJ達は“ヒップホップDJ”というカテゴライズになるだろうし、実際に振り返ってみると、それぞれが様々な年代のヒップホップを鳴らしていたのは間違い無いが、どのDJも1つのサウンド、テンポ、スタイルに落ち着くことはなく、広範囲に及ぶ音楽性を提示した。Tony Touchを例にあげると、彼のセットはヒップホップから始まり、ファンキーでソウルフルなハウス、レゲエ、オールドスクール、ディスコまでを自由自在に行き来し、終始飽きさせないプレイを見せていた。Tonyと仲の良いラッパーのZeebraも来ており、Tonyのセットの冒頭でTonyと共にラップを披露するというサプライズもあり、大いに盛り上がった。 Photo credit: Taro Mikami イベント会場にはタイムテーブルの類は無く、遊びに来た人もDJがブースに現れるまで誰が登場するのか解らない。「どんな大物が来ているんだろう」と、期待に胸を膨らませるのも確かに楽しかったが、それよりも、誰が回しているのかをあまり気にせず、ただ無邪気に音楽を楽しむことを可能にしてくれるパーティーでもあると感じた。どうしても、好きなDJやアーティストを目当てにクラブに行きがちだが、たまにはこういった“音楽をかける人”よりも“かかっている音楽”が主役のパーティーも良いのではないだろうか。 Photo credit: Taro Mikami
RA