Michael Red - Modern Math 002

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  • Low Indigoのボスにしてヴァンクーバーで最初にダブステップを広めたひとりでもあるMichael Redは、ヴァンクーバーの他の盟友たちと袂を分かち、いまではブリティッシュ・コロンビアの長閑なサンシャイン・コーストで暮らしている。そのせいか、このEPのサウンドにどこか孤立感が漂っているのも驚きではない。カルガリーのModern Mathの2枚目として届けられたこのリリースには過去にダブやR&Bにどっぷり浸かった影響から生まれる彼の独創的なダンスミュージックが提示されており、直接的なインスピレーションというよりはかすかな記憶をもとに作られているかのようだ。 ダブステップの空感性やガラージの跳ね感など、Redはすでに聴き親しまれたパターンやアイデアを援用する。しかし、その組み合わせ方はまったく新鮮なものだ。"Fade To Light"はたしかなスイング感を持ちつつ、それはあくまでもタイトで90年代後半のIDMのような神経質さを持ち合わせている。得体の知れないノイズとヘヴィーなリヴァーブの連なりはダブ・テクノにも近く、いっぽうで断片化されたベースラインやヴォーカル・サンプルは初期Hessle Audioを思い起こさせる。しかしその総体としての"Fade To Light"というトラックは、他の何にも似ていないサウンドなのだ。 "Stir"はさらに独特なトラックで、小刻みなヴォーカル・カットアップをはじめとするすべてのエレメントが非常にタイトに組み合わされて、サウンド全体が繊細なひとつのかたまりとなっているかのようだ。彼のライブセットにおける空間性を思わせる"Sideways"はマッシブなリヴァーブとまるで水中にいるかのようなアトモスフィアを軸にしており、そこに居座ったタムはまるで水面の流れを思わせる。"No Smoke No Fire"はEP中でも最もストレートなビートで、なおかつ最も隙間の多いトラックでもある。色彩の断片がコード展開を形成しているが、これ見よがしなところはまったくない。魅力的かつ少しミステリアスで、決して近寄って見ることができない、まさしくRedらしいトラック集だ。
  • Tracklist
      01. Fade To Light For 02. Stir 03. Sideways 04. No Smoke No Fire
RA