Theo Parrish - Theo Parrish's Black Jazz Signature: Black Jazz Records 1971-1976

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  • まず最初にお断りしておきたいのだが、私はジャズに関しては門外漢だ。たしかに昔からジャズは好きで、(ごく有名な作品を中心に)何枚かアルバムを持っているのだが、とりわけどっぷりとジャズに浸かり切った経験は未だにないということを白状しておこう。おそらく、ほとんどのエレクトロニック・ミュージック・ファンにおけるジャズに対する距離感は僕のそれと変わらないはずだ。あきらかに、ジャズは数えきれないほどのDJやプロデューサーに影響を与えているし、エレクトロニック・ミュージックのファンとジャズのファンのあいだには多くの共通点がある。でも、僕らの多くにとってはジャズという信じられないほど広大な惑星はとっつきにくいものに見えるのも確かだ。 そうしたことを踏まえると、ジャズ/ファンク/ソウルに多大な影響を受けたハウス・アーティストであるTheo Parrishがジャズ・ミックスを手掛けるという事実はなおさら魅力的だ。この『Black Jazz Signatures』は、カリフォルニア・オークランドに存在した伝説のレーベルBlack Jazz Recordingsの音源のみを使ったミックス・シリーズの最新作だ。1972年にピアニストであるGene Russellによって設立されたBJRは、彼ら自身の言葉をそのまま借りれば「オルタナティブからトラディショナルまで、新しく新鮮なものを提示し、公民権運動の初期に生まれたアーバンでブラックな感覚を内包させる」ために立ち上げられたという。このレーベルから発表された作品のいくつかはそれなりの商業的成功を得たものの、BJRが抱えていた10人のミュージシャンたちはアンダーグラウンドな評価を集めるにとどまり、Parrish自身もそうであるように、好事家や同業アーティストといったごく一握りの人々から密かに愛され続けていた。 Parrishにミックスを引き受けてもらうために、日本のレーベルであるSnow Dog RecordはBJRのバックカタログのリイシューとミックスのためのライセンスを取り、貴重なLP群をパッケージにまとめてデトロイトに送ったという。それからしばらくして、Parrshはいくつかのヴァージョンのミックスを送り返した。それらはヴァージョンごとにすべて異なった性格を持っており、あるものはより挑戦的で、あるものはより抑制されたものであったそうだ。このミックスはその中間というべき性格を持っており、全体としては明るくアップビートなものでありながら、狂乱的で不協和音的なエナジーが不意に忍び入ってくる。Parrishのミックス・スタイルはまさしく文句のつけようもないもので、そこにはエフェクトも一切無く、各曲ごとをしっかりと聴かせながら全体をひとつのフロウにまとめあげている。そのセレクションの一部には彼の奇抜なクリエイティヴィティが反映されており、たとえばGene Russelが"My Favorite Things"を演奏したヴァージョンや、最後のトラックであるWalter Bishop Jr "Blue Bossa"には驚きのリズム・チェンジの瞬間がある。最初から最後まで、ミックスは美しい豊かさとエナジーに溢れており、言うまでもなく啓蒙的だ。Black Jazz Recordsというレーベルは、知っておいて損はないレーベルだ。イントロダクションにもあるように、こうしたトリビュート・ミックスを作らせればTheo Parrishの右に出るものはいないだろう。
  • Tracklist
      01. Doug Carn - Trance Dance 02. Gene Russell - My Favorite Things 03. The Awakening - March On 04. The Awakening - Convulsion 05. The Awakening - Jupiter 06. Calvin Keys - Criss Cross 07. Rudolph Jonson - The Highest Pleasure 08. Walter Bishop Jr - Those Who Chant 09. The Awakening - Mirage 10. Calvin Keys - BE 11. Rudolph Jonson - Time & Space 12. Walter Bishop Jr - Blue Bossa
RA