Fred P - BQE

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  • 「ディープ」とは、ダンスミュージックを語る時にあまりにも多用される形容詞だが、Fred Peterkinが作る音楽こそこの形容があまりにもぴったりすぎるものはないだろう。2006年のBlack Jazz Consortium名義でのデビューの際には性急さとスペイシーさを見せつけたこのクィーンズ出身のプロデューサーは他のトレンディなフォロワーたちがついて来れないほどのクールさでその独自の手法を確立しつづけている。これは、決してFred Pが進化していないという意味ではない。いや、それどころか、ここ数ヶ月のあいだに彼のDJを体験した人ならわかると思うが、彼のディープさにおいてテクノがその大部分を占めつつあることを感じるはずだ。そのサウンドはいまも予想もつかない組み合わせを見せつけるが、ソーラー・ニュートリノの爆発のようにすっと染み込んでくる。 洞窟のようなクラブ・ミュージックを多く手掛けるThe Cornerからは初登場となるPeterkinの新作「BQE」からは、その変化が克明に感じ取れるものとなっている。疑いようもなくFred Pらしい12インチではあるのだが、ここでの彼はより深い場所に光をあてようとしている。"Splitting Particles"では初期の彼のトラックでよく聴かれた美しいパッドがよりラフに鳴らされ、捩じれたメロディがキックドラムのタイトな隙間を縫うように駆け抜けている。"Tube Compression"にはフェンダー・ローズが散りばめられ、同時に彼のソフトな一面をも思い起こさせるが、割れたパイプのようなドラムやせり上がるようなエレクトリック・ノイズは悪辣なムードを落とし込んでいる。緊張感に満ちた"Storm Clouds"でのひとつのコードのように聴こえる優美なシンセは頑として動きを拒否しているかのようだ。"State Of No State"ではようやくスイング感がにわかに感じられるものの、ストレンジなヴォーカルの存在感やほとんどメロディのないまま展開するあたりは聴き手をまったく安心させてくれない仕上がりになっている。
  • Tracklist
      A1 Splitting Particles A2 Tube Compression B1 Storm Clouds B2 State Of No State
RA