- 過去数年のディープハウスではエモーションよりもラフで即物的な機能性を重んじる傾向が続いているが、Spectral SoundをベースにするKate Simkoは仄暗いエモーションの炎を大切にキープしている。彼女の最新作では、昨年の3枚の作品から続くソング・オリエンティッドなアプローチを保ちつつ、リヴァーブに浸されたJem Cookeのヴォーカルをディープハウスのグルーヴと紡ぎ合わせ、悲しげなピアノ・コードの背後に断片化して浮き上がらせている。後半では、デトロイト調のストリングスやベルがフロアーへのベクトルへと向かわせるものの、それは短いインタールード的なものにとどめ、ふたたび感傷的な内省へと舞い戻っていく。
Tevo Howardはあえてムーディさを排除し、彼のリミックスではCookeのヴォーカルを狂乱的なベースとDrexciya的なリズムの中に放り込み、オリジナルでの優美なムードははるかにクレイジーなものへと変化させられている。Kerri Chandlerによるリミックスはオリジナルに忠実なビートを踏襲しつつ、Panorama Barの早い時間帯にぴったりの液体的なシンセ・スタブを折り込み、叫びのようなレイブ調の音色をさらに追加している。ChandlerとSimkoによるインスト・ミックスはまさにPanorama Bar仕様というべき真っ当なダブ・ヴァージョンだが、Cookeの魅惑的なヴォーカルが抜き去られている分、どこか落ち着かない気分になるのも確かだ。
Tracklist A1 Your Love
A2 Your Love (Tevo Howard Remix)
B1 Your Love (Kerri Chandler Bob Beaman Vocal Mix)
B2 Your Love (Kerri Chandler Bob Beaman Instrumental Mix)