Lone - Airglow Fires

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  • 昨年リリースされたアルバム『Galaxy Garden』においてMatt Cutlerの(ざっくりと言えば)ヒップホップからハウスへの転身は確実なものとなった。たしかに、彼のリズム的な枠組みは変化したが、その手法的な面ではいまだに強い個性を保っている。これはおそらく彼独特の実に甘美なコードワークにあるはずで、だからこそCutlerのサウンドはBoards Of Canadaのマキシマリスト版とも評されるのだろう。とはいえ、ダンスフロアーという場面では、その効果はよりレイヴ・ノスタルジアの強い派手で強烈なものとして表出している。 この「Airglow Fires」はLone名義としては前述のアルバム以来の新作となる。タイトルトラックはあたりまえのような親しみやすさを持ち、水中をくぐらせたようなレイヴ・コードと煌めくようなメロディが異彩を放っている。これまでの彼はグルーヴよりもメロディを重んじてきたようにも思えるが、ここでは強固などっしりとしたスウィング感を軸にしており、それが非常に特徴的だ。ジャジーなコードが導くそのグルーヴはFloating Pointsの"Marilyn"を彷彿とさせ、同様のソウル感を醸し出している。しかし、Cutlerはそれらをより包み隠さず爆発させ、軽薄なものに響いてしまうリスクすら厭わない。"Begin To Begin"は寡黙ではあるがラグジュアリーな心地よさがある。中心にはスケールを魅惑的に上下する繊細なメロディを敷き、そのグルーヴの柔らかさはベースラインによって強調される。ここでCurlerが参照しているのはニューヨークハウスで聴かれるようなソウルフルなキーボード・スタイルだが、そのインパクトは見事なまでに最大化されている。
  • Tracklist
      01. Airglow Fires 02. Begin to Begin
RA