- Tresorがスタートさせたアンダーグラウンド志向の強い新たなミックスシリーズ『Kern』に、第一弾のDJ Deepに続きDJ Hellが登場。言うまでもなく、Helmut Josef Geierはその知名度というよりは長年ヨーロッパ・テクノの重鎮として刻んで来たキャリアの重みにおいてこそこのミックスに選ばれたというべきだろう。彼のレーベルInternational Deejay Gigolosがエレクトロ・クラッシュのブレイクを助けたという事実や、過去のP Diddyといったアーティストたちとの競演したという事実にHell自身の存在感は隠れがちではある。実際には、International Deejay Gigolosというレーベル、そしてそれが醸し出す一種のグラマラスなフェティシズムはこのミックスでも収録されたDan Diamond "Club Therapy"で唄われる「VIPエリアに乗り込みシャンパン飲みまくり」的な世界観とは真っ向から相反しているといっていいだろう。
とはいえ、このミックスで表に出てきているのは洗練されたプレイボーイとしてのHellというよりは、ベテランのレイバーとしてのHellのほうが色濃い。この『Kern Vol.2』に収められているのは、飾り気のないハウスやテクノをハードでインダストリアルなエッジを効かせてミックスしたものだ。Odori "Movements 1-4"での渦を巻くパイプの底からビーツが浮かび上がって始まり、Capracapa "Flashback '86"のHell自身によるリミックスで幕を閉じるこの70分程のミックスにはほぼ全編にわたって容赦のないキックが打ち込まれ続けている。彼が2009年にリリースしたミックス『Body Language 9』とは違い、この『Kern Vol.2』にはアンセムらしいアンセムはひとつも収められていない。唯一、Kenny LarkinがかつてDark Comedy名義でリリースした"War Of The Worlds"がこの作品中でもっとも有名な曲だろうか。そのかわり、ここには問答無用の強力なDJツールが満載だ。Code 6 "Quad 1"のような古いトラックから、Jonas Kopp "X"のような最新のトラックまで、Hellは分け隔てのない緻密さでミックスして見せている。
そう意味では、Reconditeのような新しい世代とKevin Saundersonのようなヴェテラン世代が同居したこのミックスはクラシックであると同時に現代的にも聴こえるし、昨今のテクノにおいて再び復権を果たそうとしているインダストリアルなサウンドの潮流をも反映していると言えるだろう。このミックスはHell自身のルーツ回帰を感じさせる一方、SoundCloudなどに海千山千のミックスが溢れる現代に対する風変わりな返答でもある。単にダウンロードされては使い捨てにされるものよりも、繰り返しプレイしたくなるようなものを作ろうという心意気が感じられるし、そのアイデアが反映されたここでのHellの手腕はまったく古臭さを感じさせない。
Tracklist01. Odori – Movements 1-4
02. Code 6 – Quad 1
03. Dan Diamond – Club Therapy (Peace Division Unreleased Mix)
04. Dark Comedy – War Of The Worlds (Epic Mix)
05. DJ Yoav B. – Energize
06. The Horrorist – Wet & Shiny (DJ Hell's 2013 Rework)
07. Literon – Machine 1
08. QX1 feat. Emanuel Pipen – Love Injection (Wild Child)
09. Robert Hood – Sleep Cycles
10. No Smoke – Koro Koro
11. Sub-Culture – Dreams (Tribal Life Mix)
12. Inner City – Ahnongay
13. Halogen – Bliss (DJ Hell's 2013 Rework)
14. Major Problems – Overdose
15. Recondite – DRGN
16. Jonas Kopp – X
17. Shivers – Fornax
18. DJ Spookie – Home Jam
19. Steve Poindexter – Whiplash
20. N.Y. Connection – N.Y.C - The Dub
21. DBX – Blip (Chicago Style - '92 Unreleased)
22. Lisa Cadena – Untitled A1
23. Sebastien San – Arp Madness
24. Recondite – EC 10
25. Capracara – Flashback '86 (DJ Hell's 2013 Rework)