Pangaea - Viaduct

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  • アーティスト自身がレーベルを立ち上げることは普段それほど関心を呼ぶことはないが、Pangaeaがそれをやるとなると話は別だ。彼はすでにBen UFO、Pearson Soundと共にHessle Audioを運営しているが、今回彼自身の新たなレーベルHadalが立ち上げられたのだ。Pangaeaの手によるその第一弾シングルは彼がこれまで展開してきたパーカッシブ・テクノ/ガラージ/ジャングルのハイブリッド的なものからそう大きく飛躍してはいないとはいえ、ここ最近のHessleからの質実剛健なリリース群に比べるとおそらくはより濃密な感覚をおぼえる。 Kevin McAuleyはデビュー作である「Coiled」以来、緊張と開放の繊細なバランスを展開してきたが、この"Viaduct"の前半でもその感覚は遺憾なく発揮されている。タイトに編まれたパーカッション、グライミーなスタブ、耳の中をくすぐるようなシンセがじわじわと展開しながら、突如トラックは豹変し性急でアグリーな表情を見せ始める。そのカオス的な恐怖感はしかし、McAuleyの手中で見事にコントロールされているのだ。 "Mission Creep"はその設計という点では明らかなDJツール・トラックだろう。正しいセットでプレイされればまさしく本物のウェポンになり得る、輝かしいほどの機能性を持ったトラックで、どっしりとしたキックと騒々しいスネアは激烈でありながらも精巧なディテールを有している。しかし、このEPで真の輝きを放っているのは"Razz"だ。この曲はアブストラクトなヴォーカルの断片とシンバル・クラッシュで始まる。そこから続くのは"Mission Creep"でさえも軽く上回る狂乱性だ。ビットクラッシュが掛けられた奇妙なシンセ・メロディが疾走するブレイクビーツと結びつき、ダスティでありながらも見事に磨き上げられたサウンドを同時に実現している。メロディはやがて澱んだパッドに取って代わられ、そのことで攪乱したパーカッションがさらに際立ち、最後にはスネア・クラッシュが氷風呂のごとき戦慄を与える。
  • Tracklist
      1. Viaduct 2. Mission Creep 3. Razz
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