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Rainbow Disco Club
Published
May 23, 2013
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Resident Advisor
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ここ数年間で、Rainbow Disco Clubのチームほど運に恵まれなかったプロモーターはなかなかいなかっただろう。2011年に開催予定だった彼らのフェスティバルは、3月に起きた東日本大震災の影響でキャンセルせざるをえなくなり、翌2012年にリベンジを試みたものの、爆弾低気圧によってフェスティバルは再び中止となった。しかし2013年、彼らはめげることなく、2010年以来2度目となる東京でのフェスティバル開催実現に向けて力を注ぐことを決意した。昨年、直前の開催中止によって、ヴェニューの再調整などで大混乱となった事態を踏まえた彼らは、フェスティバルのメインは屋外でのデイタイムイベントという点はそのまま残し、今年は渋谷WOMBとSeco Barを会場とした2つのナイトタイムイベントを付け加えるということを計画当初から決めていた。
もちろん、ナイトタイムイベントのブッキングは万一の事態に備えメイン会場に劣らないものであったが、蓋を開けてみると、当日は朝から素晴らしい天気となった。結果として、午前10時という非常に早いオープンにも関わらず、晴海客船ターミナルはあっという間に人で埋め尽くされた。会場は、東京の超現代的なお台場エリアの近くに位置する、東京湾沿いのイベントスペース。近隣に高層建築やレインボーブリッジを望むことのできる絶景スポットだ。早くから来場した観客達へ向けて、東京を拠点に活動するSisiがディープでソウルフルなディスコセットを披露。その流れを引き継いでCottamが登場し、輝く太陽にピッタリのバレアリックサウンドへと展開。そして昨年のベストリリースのうちの1つ、Paranoid Londonによる"Paris Dub 1"でセットを締めくくった。続いては、日本を拠点に活動するDJ Sprinklesによる貴重な国内でのパフォーマンスで、ラフでアナログなアシッドハウスから始まり、彼女のトレードマークであるロングミックスを披露。じっくりと、かつ荒削りにセットは変化していき、ミキサーのビルトインエフェクトをここぞとばかりに使っていた。気温が最高潮に達した頃、Sprinkles自身が最近手がけたDucktailsのリミックスがかかった瞬間は実に瞑想的であった。その後は札幌を拠点に活動するKuniyukiによるライヴ、ベテランDJ Natureによる2時間半のDJセット、そしてアメリカ人プロデューサーKevin Yostのライヴと続いた。特に日本人プロデューサーであるKuniyukiの演奏は筆者の中でもこの日のハイライトであり、簡潔かつ変化に富んだそのセットは、跳ねるようなアシッドハウスや、彼とHenrik Schwarzとの共作"Once Again"に即興でジャズピアノの演奏をのせるなどして観客を盛り上げていた。
様々な音楽で溢れた1日だったが、Dixonのテックハウスを中心とした4つ打ちのセットはごく平凡なものであり、観客が期待していたであろうフェスティバルらしいサプライズが投下されることはなかったように思う。まだリリースされていないAmeによるThe XX "Reunion"のリミックスがかかった点を除けば、この90分は印象に残るものとは言えなかった。忘れてもいいことなのだが、何よりも最もガッカリしたのは、Dixonが彼のセット、つまりデイタイムイベントの締めくくりにDrive OSTの"A Real Hero"を選んだということだった。たくさんのハイライトと共にオーディエンスの記憶に残るであろう最後の1曲をこのポップチューンに決めたのは、賢明とは言えないだろう。 再び音が鳴り始めるまで1時間強。渋谷へ場所を移し手早く夕食を済ませてからWOMBに到着すると、ちょうどDixonが先程と同じようなプレイをしているところだった。そのため、といっては何だが、他の小さいフロアに出演していた日本人アーティスト達をチェックすることができた。ラウンジ出演者の中でも、フランスの7even Recordingsよりデビューアルバム『Bilateral』をリリースしたばかりのダブステップの雄Enaと、YOSA x Shu Okuyamaは特に良かった2組と言えよう。YOSAとShu Okuyamaによるユニットはライヴセットを披露していて、その演奏は彼ら自身の表情豊かで甘ったるいオリジナルハウストラックに命を吹き込んでいるかのようであった。そろそろメインフロアにBarker & Baumeckerが登場する時間になったので移動することにした。Ostgut-Ton、そしてBerghainの看板アーティストである彼らによるライヴは、現在のベルリンの“テクノサウンド”が持つあらゆるニュアンスを包括するような内容だったが、残念ながらWOMBのサウンドシステムでは、彼らが持ち込んでいた数々の貴重なアナログ機材の本領が発揮されることはなかった。 トリを務めたのはBen UFOだ。この新進気鋭のアーティストは、楽曲制作は行っておらず完全にDJとしての経験によってキャリアを積み上げてきたせいか、ここ日本のオーディエンスにとってはあまり馴染みがなかったかもしれない。しかし、レーベルHessle Audioのボスでもある彼は、Containerの"Acclimator"や、Levon Vincentの隠れた名曲"Together Forever"などをドロップし、すぐにダンスフロアをジャックすることに成功。後者のトラックがかかった瞬間はWOMBのメインフロアが誇るスモークマシーンとも息がピッタリだった。一方でオーディエンスも、Anthony Naplesが今年The Trilogy Tapesより発表した傑作"Busy Signal"や、息を飲むような8分間となったElgatoの"Dunkel Jam"がかかった時など、彼がテンションを落とした時もしっかりと反応していた。Ben UFOの日本デビューにはしばし時間がかかったように思えたが、この日フロアに鳴り響いていたアンコールを望む盛大なコールが示していたように、彼の再来日が実現するまで、そう長くかからないだろう。
その後、小さな1フロアのみのヴェニュー、Seco Barまでの短い(既に午前6時だった為感覚が鈍っていたかもしれないが)道のりを歩いた。途方もなく、そこではまだパーティーの真っ最中だった。1日の中でも、この型破りな時間帯にプレイすることはBaumeckerにとって珍しくはないだろう。彼は軽快なヴォーカルテクノで観客を踊らせ、その後日本人プロデューサー/DJのGonnoにバトンを渡した。午前9時、フェスティバルが始まってから約24時間が経とうとしていて、気持ちはまだ遊び続けたかったのだが体はもはやついていくことができなかった。しかしその時のフロアの雰囲気から、終了予定時刻の昼まで、パーティーがそのまま盛り上がり続けるであろうことは容易に想像できた。
総合的に見て、Rainbow Disco Clubは大成功だったと言えよう。印象に残ったは、3つの会場それぞれの客層が微妙に違っていたという点だ。やや年齢層が高めで、家族連れにも優しい雰囲気だったデイイベント。ファッショナブルで、熱気溢れるクラウドで盛り上がったWOMB。そして底知れないタフさを持った東京アンダーグラウンドヴェニュー、Seco Bar。それぞれの会場の持つ特徴に合わせたブッキングや、イベント中ずっと溢れていたポジティブさもまた素晴らしいものであった。また、全会場を彩っていたデコレーションも忘れてはならない。特に晴海会場のデコレーションは目を見張るものがあったが、夜になってからは更に素晴らしかった。遠くに見えていたこの街の象徴的存在である東京タワーが、通常のオレンジ色からなんとレインボーカラーの特別ライトアップへと変わったのだ。それはまるで東京タワーがRaibow Disco Clubのチームへ、「お疲れ様」と語りかけているかのように思えた。
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