OSUSHIDISCO with Horror Inc. aka Akufen

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  • 若い年代のクラバーが減少し、客層の偏りが感じられる東京近辺のクラブシーンだが、数少ない20代のパーティーフリークは、状況に風穴を空けようと試みている。その中でも抜きん出て活発に、独創的なパーティーを行っているのが、OSUSHIDISCOクルーだ。テクノやハウス、ディスコからロックまで、ジャンルを問わず彼らの感性を刺激する高い実力を持ったゲストを招致しているOSUSHIDISCOだが、今回は初となる海外ゲストをブッキング。Akufen名義で知られる、カナダ・モントリオール出身の奇才Marc Leclairが、日本では初となるHorror Inc.名義でのライブを披露した。会場は、片瀬江ノ島駅近くのビル4階に位置するOppa-La。江ノ島を一望できるロケーションや、箱の内装を含めた雰囲気は、唯一無二のもの。過去にDJ HarveyやDaniel Baldelliもプレイした名所である。とはいえ、ここにHorror Inc.をはめ込むという発想に、OSUSHIクルーの奇特かつ鋭敏なセンスが感じられる。 オープンのgoshineiはユニークなサンプルを多用した、アップリフティングで跳ねたハウスを中心にプレイ。やや性急な展開はあったものの、一貫したスタイルと高いスキルが感じられた。Nofearは独自の嗅覚がいかんなく発揮された、ファンキーなオールジャンルセット。年代もテンポも混沌とした中に、確かな流れを見つけ出して繋げる、このパーティーを象徴するような選曲だ。一転してJunioは力強い低音のグルーヴを基本に、独特の荒々しさが根付くテクノセットを開始。メインアクトを待つ会場をより一層盛り上げていく。ストレートさもひねくれた部分も含め、一つの流れとして成立させる力量が、彼らには備わっているのがわかる。Horror Inc.はMacBookとDJミキサー、コントローラーといったシンプルなセッティングながら、やはり誰にも似ない別次元のライブを披露した。Marc氏独特のくせの強いリズムはそのままに、サンプルを切り刻み新たな音像を作るAkufen名義とは明らかな違いが感じられる。ストリングスやギターといったサンプルを加工したフレーズと、繊細なシークエンスが暗く冷ややかなムードを作り出していく。テクノ・ハウスというフォーマットでここまでの世界観を構築できるアーティストもなかなかいないだろう。展開するたびに風景や映像が次々と脳裏に浮かび上がっては消える、恐ろしいほどに作り込まれた映画のような体験であった。大成功のライブに続いて、P-YanがDJを開始。ベルリンでの経験が鍛えた、執拗にキープされるグルーヴが根底を支えることで、時折挟まれるキュートで捻りの利いた展開が最大限の効果を発揮する。レジデント勢の中でも別格の安定感を感じさせるプレイであった。 ラストのレジデント勢のB2Bが象徴していたが、このパーティーはけして綺麗にまとめられて終わるようなものではない。しかし、はまれば抜け出せない不思議な面白さがある。DJ一人一人も、パーティーとしても、まだ荒削りな部分があるが、刺激的な発想と、それを実現する行動力がある。それに加えて、個々の高いポテンシャルが、このパーティーを成立させている。現場にたどり着くまでなかなか容易ではなかったが、おかげで都市部のクラブ環境では味わうことができない経験をすることが出来た。夜明け前の太平洋を眺めながら、Horror Inc.のサウンドに身を任せるのは、格別というほかない。今後もOSUSHIDISCOがどのような奇想でクラブシーンに新たな楽しみ方を提示してくれるのか、期待できるだろう。
RA