Kangding Ray - The Pentaki Slopes

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  • Raster-Notonはしばしば「サウンド・デザイン」的なレッテルで語られがちだが、確かに通常の場合その見方は正しい。しかし、当レーベルのフランス人メンバーであるKangding Rayは常に(どちらかというと)テクノ的な趣向を見せ続けており、そのテクノはたしかに精巧なサウンド・デザインを埋め込まれてもいる。彼がRaster-Notonで過去に手掛けたサウンドはある種のスウィング感を持ち、同時にややアブストラクトなものであったのだが、2011年のアルバム『OR』以来となるこの新作「Pentaki Slopes」において、彼はよりストレートなかたちでのフロアーへのアプローチを見せている。 このEPには"North"と"South"というおそらくは2曲で対比を成すであろう9分を越えるマッシヴなトラックが2曲収録されている。"North"は微細な跳躍とともに突進し、あたかもDavid Letellierはフラットなビートの配置では我慢できないかのようだ。炎がうねる竃のなかから飛び出してきたかのようなシンセの群れはいかにも彼らしい磨き上げられたプロダクションの賜物だが、"Plateau"での魅惑的な3分間ではそれらはやがて減衰すると、その意図は曖昧になる。良くできたトラックではあるのだが、彼のベストには程遠いと言わざるをえない。 幸い、"South"は文句の無い出来だ。Marc Romboy的な呻き声でスタートする冒頭部がしばらく続くが、グライミーな展開を見せるのかと思わせたところで、美しいコードがしっかりとしたビートを引き連れながら広がっていく。古いトランスのトラックが悪戯まじりにカヴァーされたようでもあるのだが、これまでLetellierが発表したトラックの中ではもっともダンサブルなものであると同時に、もっともイメージの喚起力が強いものであろう。
RA