Pioneer - CDJ-2000 Nexus

  • Published
    Jan 18, 2013
  • Released
    September 2012
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  • Pioneerは約10年前から競合他社に対して先手を打ち、自社のテーブルトップ型のCDプレイヤーを世界中のDJブースのスタンダードにすることに成功した。元々Pioneerの製品名である「CDJ」は、今や全てのテーブルトップ型のCDプレイヤーに対する総称として使用されており、CDを使用するDJを表す名称としてさえ使用される時がある。時と共に様々な新機能やアップグレードがなされてきたが、今回の新しいフラッグシップモデルCDJ-2000 Nexusほどパワフルで万能な機種はないだろう。 Nexusで無視できない新機能は、6.1インチ、480 X 234ピクセルのWQVGA LCDディスプレイだ。DJ用ソフトからヒントを得たこのディスプレイは色分けされた波形を5段階ズームで表示することが可能で、更にはトラック選択、トラック情報の詳細表示、そしてフルカラーのアートワークも表示することが可能になっている。ディスプレイの周囲にはバックライト形式の各種ボタンが配置されており、使用メディアの選択、様々なメニューの切り替え、またトラック情報の表示を行う。またディスプレイ右側には大型のロータリーセレクターと、メニューとトラック選択時に使用する「Back」(戻る)ボタンが配置されている。 DJブースへCDJ-2000 Nexusを導入する際の決定打となりうる特徴のひとつは、様々なプレイバック方法に対応しているため、様々なスタイルのDJが使用できるという点だろう。Nexusは従来のオーディオCDへの対応は勿論、MIDIによるDJソフトウェアのコントロールが可能で、USB機器、SDカード、データDVD、ラップトップも対応している。そして驚くことに、ワイヤレス接続でスマートフォンやタブレットとの接続も可能だ。しかし、これらのフォーマットをフルに活用するためには、使用する楽曲は全てPioneerの独自のソフトrekordboxで解析され、同ソフト上にまとめられている必要がある。このソフトは付属するCD-ROM内に収録されており、簡単に自分のコンピューターへインストールすることが可能だ。CDプレイヤーを使用するために新しいソフトを学ばなければならないのは多少厄介とも言えるが、このソフトを導入することによって得られる機能はそれだけの時間を費やす価値があると言える。ちなみに筆者の場合、数分で大量のトラックを解析し、USBスティック内にプレイバック用プレイリストを作成することができた。 このrekordbox導入によって得られる特筆すべき新機能は、「クオンタイズ」だ。この機能を使用することで、キューポイントやループのタイミングのズレを補正することができる。筆者も試してみたが、ズレることなく使用することができた。この機能を「チート」だと思う人もいるだろうが、ループを簡単にそして完ぺきな形で設定できることを嫌がる人はいないだろう。またもうひとつの新機能として「スリップ」がある。これはトラックのポジションを見失うことなく、ポーズ、スクラッチ、ループ、リバース、ホットキューを行える機能で、つまり「スリップ」モードを終えた時点で、トラックは上記を行わずに通常再生されていた場合のポジションからプレイバックされる。筆者もバックスピンとホットキューを試してみたが、全く問題はなかった。オーディオCDでもこの機能が使用可能になる日が来ることに期待したい。 複数のNexusをLANケーブル(カテゴリー5/CAT5e)で接続する、所謂「PRO DJ LINK」にも機能が追加されている。大きな議論が予想されるが、今回のNexusにはシンク機能(BEAT SYNC)が組み込まれており、複数のNexus間のビートマッチが可能となっている。そしてTRAFFIC LIGHTは、Mixed In Keyのようなソフトと同様、プレイされているトラックとマッチする音程(キー)のトラックがディスプレイ上に色分けされて表示されるようになっている。またBEAT COUNTは設定したキューポイントまでの拍数が表示され、PHASE METERではトラックの小節数と拍数をシンクされているマスタープレイヤー上に表示することが可能になっている。 市場予想価格が約2000ドル/1899ユーロ(日本では18万円前後)であるCDJ-2000 Nexusは当然のことながら個人用というよりはクラブ用で、実際その能力をフルに感じることができる環境はクラブだろう。Nexusを導入すれば、オーディオCDを使用するDJ、USBスティックやカードを使用するDJ、そしてラップトップを使用するDJの全員が同じ環境下でプレイすることが可能になるのだ。長時間の使用後はやや本体が熱くなるが、筐体は非常に頑強に組まれており、Wolfson製D/Aコンバーターが組み込まれ、20000Hz以上の周波数帯がフィルタリングされているサウンドクオリティも素晴らしい。rekordboxを習得するのには多少時間がかかるが、大量のトラックを小さなメディアに収めて運ぶことが可能となり、また非常に魅力的な機能が使用可能になるという恩恵が得られる。 Ratings: 価格: 3/5 多用途性: 4.5/5 強度: 4/5 使いやすさ: 3.5/5
RA