Soundstream - Julie's Theme

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  • Soundstreamはディスコ・サンプルのカットアップによってハウスを作る。至極シンプルなフォーミュラだ。作ろうと思えば誰もがこうした音楽を作れそうなものなのに、彼のレコードは他の誰とも違うサウンドを有している。この新しい12インチに収められた両サイドのトラックにも、Frank Timmの作る音楽をこれほどまでにユニークたらしめている無形のマジックが詰まっている。 "Julie's Theme"はいわばSoundstreamのヴィンテージ・スタイルといったところだろうか。吃音のようなキーボードはどこか古いジャズ・ファンクのCDが音飛びを起こしているようでもある。ハイハットやオルガン・スタブがゆっくりと滑り込んで隙間を埋めはじめると、揺らいだディスコ・メロディが姿を現す。しかし、トラックが平衡感覚を掴んだかと思うと、Soundstreamはそれらを解体しやがて煽動するかのようなブリップ音と硬質なパーカッションだけが残る。こうして残された空間には非常に大きなキックドラムが幅を利かせてトラックの後半を引っ張る。こうした気骨あふれるサウンドデザインと美しいメロディの発露の組み合わせこそ、まさにSoundstreamらしさと言うべきものだろう。ひとことで言ってしまえば、彼はその青年期のほとんどをファンク愛好家として過ごし、Hardwaxで筋金入りのテクノ・マニアたちを相手にしてきた男なのだ。 "Inferno"はTrammpsの70年代クラシックである同名曲と関係があるのかもしれないし、関係ないかもしれない。どちらにせよ、その洒落のめしたダンスフロアーでのエナジーと言う点では共通している。Bernard Edwardsのスラップ・ファンクのソングブックからそのまま飛び出してきたかのようなベースラインを下敷きに、このトラックはせり上がるようなストリングスやディスコ・サンプル、ひたすら鳴り続ける大きなキックドラムによって前に押し出される。どれをとってもダンスミュージックでは嫌と言うほど使い古されてきたエレメントではあるのだが、なぜかこの"Inferno"というトラックにはそうしたクリシェ臭がまったく感じられない。この12インチを通して、またしてもSoundstreamは所謂「ソウルフル・ハウス」というカテゴリーが単なる派手なディーヴァやShelter recordsの三流品だけのものではないということを証明してみせている。
RA