Various - Way of The Samurai 2: Code of Honour

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  • 昨今のドラムンベースのリヴァイバルとルネサンスを論じる機会は数あれど、そうした議論のなかではニュージーランドのレーベル、Samurai Musicの存在は忘れられがちだ。たしかにこの(現在はベルリンに拠点を構える)レーベルにはCriticalのような鮮烈な人気もなければ、Shogunのような強固なファミリー的構成もないが、Tokyo ProseやFISといった興奮を誘う新たなタレントを発掘すると同時にASCのようなヴェテラン勢による素晴らしいリリースを展開している。今回、レーベル設立5周年を祝い、レーベルボスのPreshaは2枚組ものヴォリュームにわたりレーベル史上2作目のコンピレーションをリリースした。もしこの『Code of Honour』をリリースする目的が、そのライバルたるレーベル群と肩を並べるという意図にあるとすれば、これほど強烈な一撃はないだろう。 『Way of the Samurai』と題されたコンピレーション・シリーズの2作目にあたる本作は、ドラムンベースそのものに対する声明を行うかわりに、非常に広範囲に網を広げてこのレーベルの多様性を分かりやすく提示している。頑なな伝統主義に拘り、テクニカルなプログラミングにおいて厳しい耳を持つ古くからのドラムンベース・マニアに対し、このコンピレーションは1曲目のMarcus Intalex "Redan"から容赦のない攻撃を仕掛けてくる。ヴェテランとニューカマーが交互に配置され、なかでもLoxy & ResoundとNymfoはそれぞれ近年稀に見る力作を披露している。 このコンピレーションにおいて提示しようとしているドラムンベース像はおそらくジャンルの辺境にある実験性を追い求めるものではないことは確かだが、ドラムンベースという制限的な枠組みのなかでどれだけのことができるかという意図については成功していると言えるだろう。DJにとってはまさに夢のようなコンピレーションだし、最後まで聴き通してやろうという勇気のあるリスナーにとっては必ず満足感が待っているはずだ。それはそれとして、このコンピレーションにはいくつものサプライズが用意されている。いつになく攻撃的なトラックを披露しているSam KDCやASCは言うまでもなくハイライトだが、ニュージーランドの新星Tokyo ProseもまたゴージャスなR&B調セレナーデで注目をかっさらっていく。 Mercy "Blackjack"での頭を掻きむしられるようなトリッピーさを持ったパーカッション、Preshaが発掘した驚異の新人、Overlookによる"Glass"での時計仕掛けのような繊細さも出色だ。Consequenceは"Noisy Spirits in this Soul"においてIDM的なテンションを怒濤のグルーヴに落とし込み、Cernはその壮大な"Apparition"でコンピレーションのトリを飾り、2011年に彼が放ったアルバム『Terminus』でのソリッドな印象すら吹き飛ばすインパクトをもたらしている。Tokyo Prose & Phil Tangent "Parity"をジャングリスト仕立てにしたKluteリミックスなどといった意外性もあり、何度も繰り返して聴き返すことができるコンピレーションに仕上がっている。この手のコンピレーションにはウィークポイントはつきものだが、この作品に関してはそれは一切存在せず、心躍るようなピークがひたすら続いているのだ。 このコンピレーションを貫く一貫性の確かさはまさしく異例で、単なるトラックの寄せ集めと言うよりは統一感のあるアルバムのようにも思えるほどだ。ここには特定の物語性もないし、一貫するフロウもないのだが、近年リリースされた他の同種のコンピレーション群と比べれば、この作品はズバ抜けた出来だと言えるだろう。未だに170BPMに対してハングリーなリスナーにも、ドラムンベースを愛好しながらも他のジャンルへと移ってしまったかつてのファンにも、そして最近ドラムンベースに興味を持ちはじめたファンに対しても、この『Code of Honour』は大きく間口を空けており、ハードなものからソフトなものまで、あらゆるエッジを包括しているのだ。
RA