Rice feat. Jan Krueger

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  • テクノ、ハウスの中心地ベルリンにて出会った二人のDJ、Tanukeep&Gが主催するパーティーRICEが、名古屋のClub Magoにて開催された。TanukeepとGの二人が真に信頼できるDJとのロングプレイを行うこのパーティー、今回はレーベルHello?Repeatを主催し、ドイツを中心に高い人気を誇るJan Kruegerがゲストとして招かれた。 まずはTanukeepとGでフロアの鳴りを確認しながらレコードをかけ始め、徐々にパーティーのムードを造っていく。一時間ほど経過したところでG単独のDJに移行。音に対するストイックな姿勢が反映された、シンプルかつ力強いグルーヴ。Tanukeepは低くフラットなハウスを中心に、全く軸のぶれない選曲でフロアの熱気をひたすら持続させる。時間感覚を狂わせ、音に没入させてしまうプレイだ。二人のDJによって既に最高潮に盛り上がる中、Jan Kruegerが遂に登場。シカゴ、デトロイトからミニマルハウス黎明期の作品まで、幅広く包括する玄人好みな選曲ながら、高いミックスの技術によって、より普遍的かつ深い魅力が加えられる。観衆を自らのペースに引き込むというよりは、共に一晩を造り上げていくようなスタイルだ。この日はフロアの一体感の高まりを受け、Janも自ずとダイナミックなグルーヴを繰り出していた。続いてTanukeep&GがDJを開始。Tanukeepのフラットなグルーヴと、Gの躍動感あるグルーヴは、組合わさると単独のDJでは到底生み出せないような流れを生み出す。互いを尊重し、刺激し合うような音のやり取り。やがてそこにJanも参戦。DJ三人からも、フロアからも、あとは思い切り楽しもう!という意志が伝わってくる。数時間のB2Bを経て音が止まるまで、訪れていた人々の意識が常に釘付けとなっていたほど、濃密な音楽体験であった。 Janのみならず国内外の多くのDJが評価するClub Magoのサウンドは、低音は深く身体に浸透するようで、中高域はくっきりとシャープな質感。だが、不思議と耳に痛くはなく、全体的に暖かみのある、長時間踊るのに適した音だと感じた。使用された機材はサウンドシステムの特性ともマッチするUreiのロータリーミキサーと、dope realのアイソレーターの組み合わせ。シンプルだが、楽曲とDJのポテンシャルを引き出すセッティングだ。また、同店のDJブースは通常やや高い位置にあるのだが、この日はRICEの二人の要望で、客と同じ目線になるように組まれていた。これもPanorama Barを敬愛する彼らならでは。 名古屋のミニマルハウス、ディープハウスのシーンは成立の過程にあるとのことで、確かにまだまだ客層が広いとは言いがたい。だが、内輪での自己満足に陥ることなく、海外のアーティストと直接交渉し、妥協なくパーティーの面白さを追求するRICEチームの姿勢は、現在の東京中心のクラブシーンにも一石を投じるものだ。他の土地ではなかなか感じられない熱気と、音楽への真摯さを感じ取ることが出来た一夜となった。
RA