Novation - MiniNova

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  • 2010年末に発売されたNovationのUltraNovaは、Novationが現在まで継続的に開発しているNovaシリーズに新たな1ページを加えることになった。1998年にリリースされたSupernovaは、そのフレキシブルな特性と、ダンスミュージックに簡単にフィットさせることができた豊富なサウンドライブラリによって、当時の多くのプロデューサーから支持された。時が経てば人の好みは変化するものだが、この特徴は支持され続けたため、後継機UltraNovaにも受け継がれた。その時代のエレクトロニックミュージックのジャンルに対応したサウンドライブラリと、オンボード上とソフトウェア経由両方でのエディット、そしてリアルタイムパフォーマンス用の機能が揃っていれば、魅力ある製品になるというわけだ。そしてUltraNovaの特徴はこの度MiniNovaへと受け継がれた。新しい世代のユーザーへNovaシリーズの精神を適正価格で伝える機材だ。 MiniNovaは、パッと見たところプレイしやすいシンセのように思える。外部電源、またはコンピューターのUSB経由で立ち上がるこのシンセは、Novaシリーズの特徴であるダークブルーのボディが特徴だ。触知性が改良されており、フロントパネルには8つのラバーパッドが配置されている。これらのパッドはアルペジエーターとアニメーションコントロールの操作に使用する。そしてその上部には、ロータリーダイヤルが下部に配置されたエディット用パラメーターマトリクスがあり、その右側に配置されたスライダーを使って、4つのパラメーターから構成されている各パラメーターグループを切り替える。リアルタイムでの操作を想定すると、このスライダーは非常に便利だ。というのは、近年のシンセによく見られるこのようなパラメーターマトリクスは通常はボタンによって切り替えるため、MiniNovaのスライダーよりも操作に時間がかかってしまうからだ。 そしてフロントパネルの中央に配置されているのはフィルター用のロータリーダイヤルで、カットオフをコントロールする。また、その他のリアルタイムコントロールには、MiniNovaのディスプレイと同じくブルーに光るピッチベンドとモジュレーションホイールが備わっている。写真で見ても分かる通り、MiniNovaはステージ上で映える機材だと言って良いだろう。 肝心のサウンドは、ジャンルとタイプによってバンクに振り分けられている。ジャンルはRock/Pop、R&B/Hip-Hop、Dubstep、House/Techno、D&B/Breaks、Classic Synthで、タイプはArp/Movement、Pad/Strings、Keyboard/Lead、Bassに分けられている。ジャンルとタイプはフィルター用ロータリーの左側に配置されているダイヤルを切り替えることによって選択するが、ダイヤルには他に全てのプログラムを自由に行き来して選択することが可能になる「All」(MiniNovaには256個のファクトリープリセットと、128のユーザープリセットが用意されており、Novationのウェブサイトからパッチをダウンロードすることも可能だ)と、「Vocoder/Vocal」が用意されている。このVocoder/Vocalでは付属のマイクを使ってヴォーカルに処理を施すことが可能だ。 MiniNovaにはUltranovaの大きな特徴であったヴォーカルとシンセを合成するヴォコーダー機能が引き続き持ち込まれているが、新たにVocalTuneと呼ばれる機能が加わっている。この機能は入力された声を、キーボード上でモノシンセとして演奏することを可能にするものだが、シンセのサウンドエンジンによって元の声を劇的に変えてしまうのではなく、リアルタイムでピッチシフトさせつつも、マイクを通過させる元の声を比較的明瞭に残すことに成功している。これは非常に面白い機能で、ヴォコーダーの持つポテンシャルを見事に引き出した機能と言えよう。 次にMiniNovaのサウンドエンジンの内部について見ていこう。各プログラムにはオシレーター3基が組み込まれており、波形はノコギリ波や矩形波を含む14種類から選択することが可能だ。また、デジタルサンプルをオシレーターとして選択することも可能で、サンプルにはベルや木管系、オルガンなど20種類のサウンドが含まれている。そして、36種類が盛り込まれたクラシックなスタイルのウェーブテーブルも用意されており、より強力なサウンドを生み出すことも可能だ。オシレーターはデチューンやシンクが可能な他、各オシレーターには専用のローパスフィルターによって音を太くする機能も搭載されている。 フィルターには14種類が用意されており、各プログラムへは同時に2種類をアサインすることが可能だ。そして、そのサウンドを6つのエンベロープジェネレーター、3基のLFO、20のモジュレーションスロットを使って変化させれば、MiniNovaのサウンドエンジンがいかにパワフルなものなのかがより強く実感できるはずだ。また、各プログラムには最大5つのエフェクトモジュールをアサインすることが可能で、リバーブ、ディストーション、ディレイ、フェイザー、フランジャー、EQ、コンプレッサーなどを自由に組み合わせることができる。しかも、頻繁に使うエフェクトに関しては、前述したフロントパネル右側のパラメーターマトリクス内の8個の空きスロット(内4個はシンセのパラメーター用)にアサインすることが可能となっており、これはユーザーに対して非常に自由度の高い機能と言えよう。 MiniNovaにおいて個人的に気に入った機能のひとつは、アルペジエーターとアニメーションコントロールのリアルタイムの操作性だ。アルペジエーターとアニメーションコントロールは前述した8個のラバーパッドの左側に配置されているスイッチで切り替える。アニメーションモードではパッドが青く光り、各ボタンはアサインされているパラメーターをリアルタイムで瞬間的に変化させる効果を与え、例えば、瞬間的にフィルターを切ったり、ピッチをグライドさせたり、リバーブを与えたりすることが可能になる。一方アルペジエーターモードでは、8個のパッドはアルペジエーターのステップシーケンサーとして機能し(アルペジエーター自体のオンオフはフロントパネルの左側で操作する)、パッドを押すことがそのままシーケンスのステップのオンオフの切り替えになる。メニューを使えば、ステップの長さやゲートタイム、スウィングの値などの変化も可能だ。 最後にMiniNovaのセールスポイントについて考えてみるが、それは結局のところ小型で安価ながら非常にパワフルなシンセだという点になるだろう。本当にこのような機材は珍しく、素晴らしい機材と言える。しかし、個人的にミニキーボードが好きではないということもあり、今回のレビューを通じて多少の不満も感じたのも事実だ。まず、NovationがMiniNovaを37鍵のミニキーボードのシンセとして小さくまとめたことは理解できるが、個人的にはフルサイズのキーボードとしてこの製品を試したいという気持ちになった。そして、MiniNovaのサウンドエンジンにはエディット可能なパラメーターが豊富に組み込まれているが、ディスプレイと本体のサイズが小さいため、エディットにはメニューボタンの切り替えやスクロールを数多くこなさなければならない。サウンドのエディット方法がこれしか存在しないのであれば、さすがに不平不満ばかりになっていたところだが、MiniNovaはUSB経由でコンピューターへ接続し、自分のDAW環境上でプラグインとして使用することで、グラフィカルにエディットを行うことが可能になっている。結論としてMiniNovaは、ライブ用、スタジオ用問わず、この価格を考慮すればお勧めの機材としか言いようがないだろう。 Ratings: Cost: 4.5/5 Versatility: 4.5/5 Sound: 4/5 Ease of use: 4/5
RA