Petar Dundov - Lily Wasp

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  • Petar Dundovといえば、ヒプノティックなシークエンスや90年代のフランクフルトやKlaus Schulzeをルーツに持つ本質的なトランス感覚を織り込んだ作品でおなじみだ。"Stairway"や"Tenth Plateau"、"Lily Wasp"といった80年代的なトーンを帯びた作品群はかつてDundovが手掛けたどのトラックよりもピュアなテクノであったし、その螺旋状になった視点は"Silent Visitor"と非常に近しいものだ。9分間を通して、トラックはドラマティックなストリングスのクレッシェンドに覆われ、瞑想的なアシッド・ラインが寄り添う。しかし、それらのサウンドを支えるのは単調なペダル・トーンである。抑制されたムードのなか下降していくマイナー・キーのアルペジオはじつにしっかりとしたフィーリングであり、軽いシャッフル感や泡のようなパルスがさらなるディープさを引き立てていく。 これまでのDundovの作品においてはファンキーな感覚というものはかならずしも優先順位の高いものではなかったはずだが、"Triton"ではスウィングしたファンクネスが注ぎ込まれている(おそらくはこれまでのDundovのバックカタログ中でも最もファンキーな1枚であったGregor Tresherとの共作"Solstice"からの影響だろう)。Aサイド同様、デトロイトの夜をドライブするかのような瞑想感に満ちており、繊細なアシッド・ラインの膨らみや艶やかな光が絶妙なアクセントとなっている。
RA