Portable - A Process

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  • Perlonオールスターの一員であり、Süd Electronicのボスであり、当代随一のヴォーカル・ハウス・ヒーローでもあるAlan Abrahamはまさしく彼以外には作り得ないサウンドを世に送り出している。メロディックでありながらもそのリズムは実に中毒性が高く、疑いようもなくキャッチーだ。Portable、もしくはBodycode名義で彼が作るトラックは数多く世に溢れるハウス・トラック群のなかに爽やかな風を送り込んでいる。彼にとっては初となるLive At Robert Johnsonからの今回のリリースでは新曲こそ"A Process"の1曲のみだが、そのオリジナルと"Flutramental"ヴァージョンは晩夏のサマージャムから今年の終わりまで私たちに汗をかかせ続けるであろう秀逸な出来だ。 "A Process"は情熱的でありながらも、どこかPortableらしいダークさが同居している。粘りのあるハウス・コードとパワフルで豊かな表情をみせるドラムの上で、Portableは"Nothing worthwhile happens easily"(簡単に起きることなんてたいした価値はない)と唄ってみせる。サウンドのコンビネーションは素晴らしく調和しており、ヴォーカルの説得力も文句なしだ。たしかに、アートというものはすべからく「苦痛のプロセス」を伴うものだが、Portableはそれとは気付かせないほどスムーズなサウンドを聴かせてくれている。今年はじめにLive At Robert JohnsonからリリースされたMaxmillion Dunbar "Polo"のPortableによるエクステンディッド・リミックスを思い出してみるといい。オリジナルの艶かしいアトモスフェリックさを性急でダーティなハウス・グルーヴに置き換えたうえで、DJセットでも際立った存在感を放つトラックに仕立てた彼の手腕は見事なものだった。このEPに収められた"Flutramental"ヴァージョンにしても、その繊細で軽やかなトーンをいかにもクラブ的なヴォーカル・ハウスであるAサイドよりもさらに内省的なムードのなかに溶かし込んでいる(Bサイドにはそのアカペラも収録されている)。こんなに素晴らしいハウス・ミュージックなら、何日も眠らずに踊り続けてもかまわない。Portableの言う「苦痛のプロセス」は、ダンスフロアーの素晴らしい瞬間のために確実に昇華されているのだ。
RA