Fis - Duckdive

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  • ニュージーランド出身のFISは、敢えて言わせてもらうならば異型のプロデューサーだ。表向きはドラムンベースのプロデューサーのようでいて、その実彼の変幻自在のミクスチャーぶりはリスナーに混乱と脅威をもたらす。散発的に発表されたいくつかのトラックを経て、FISことOlly PerrymanはSamurai Musicのレーベル、Horoよりいよいよ公式なソロ・デビューを果たそうとしている。 "Love Drama Stress"はおそらくこのEP中でももっともコンベンショナルな仕上がりだ。威圧的なドラムとうめくようなヴォーカル・サンプルが配され、ラガ・ジャングルとRockwellが出会ったかのような奇妙な世界を展開している。EPはそこからさらに奇妙さを増していく。"K Slap"はそのベースラインの輪郭がぼやけ、紙を裂くようなサウンドとともにスローダウンされている。Hessle AudioからJoeがリリースした"Claptrap"は多くの人々の印象に残っていると思うが、このEPに収められた"Duckdive"はまさに"Claptrap"以後のトラックというべきで、さらなる熱量と興奮を封じ込めてみせている。 ここに収められたトラックのなかで、もっともFISらしい苛烈な黙示録的世界観が表れているのは"DMT Usher"というトラックだ。ずるずると引き摺るようなリズムは不規則に並び、そこに喘ぐようなシンセを絡め、花火のようなサウンドエフェクトがさらに混乱の色合いを増していく。まるで自動車が衝突している様子を眺めているような気分にさせるトラック、と言えばいいだろうか。目をそむけたくなるような恐怖と強烈な興奮が混ざり合ったその光景からは決して目が離せないのだ。どう考えてもそうとしか言えない。
RA