Mala - Cuba Electronic

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  • Malaの土臭い初期ダブステップ作品群に時折見られたごく自然なスピリチュアル性を考えれば、昨今のMalaが傾倒している「ワールドミュージック」的な要素、とりわけキューバの音楽に由来するヘヴィーにシンコペートしたシャッフル感覚はとりたてて意外なものではないかもしれない。そんなMalaがGilles PetersonのレーベルBrownswoodから作品を発表するというアナウンスは目下インターネット上でも話題の的だ。 "Cuba Electronic"ではもの悲しいベルの音色と興味深いサウンドの輪郭がそれまでのMalaの作品におけるダーティなコード感を一掃している。平坦で小刻みに震えるベースはいつも通りだが、そこには素晴らしく鮮やかなハンド・パーカッションが被さってそれはUKガラージ由来のスイング感というよりもキューバらしい横揺れ感を演出している。ブルータルかつ繊細なシンセがアクセントとなって彩られるヴィヴィッドなブレイクが挿入されると、キューバン・ミュージックとダブステップはひとつのものとして見事な調和を見せるのだ。 Bサイドの"Calle F"はアルバムのジャジーな側面を匂わせ、麗しいピアノとアコースティック・ベースは入念なアレンジのパーカッションにその身を委ねる。リヴァーブの効いたピアノ・コードとトランペットは『New Forms』での過去の実験の焼き直しとも言えなくもなく、そのトラックが持つ甘美でピースフルなムードはダブステップというよりはむしろダウンテンポ的と言ったほうがふさわしいだろう(そのBPMこそ一般的なダウンテンポのそれではないにせよ)。
RA