Stray & Halogenix - Poison

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  • ロンドン出身のStrayはUKアンダーグラウンド・ドラムンベース界の隠れた若き才能であり、まったく気負いのないスタイルで既存のドラムンベースにおけるルールをことごとく破ってみせる。Kasraによるレーベル、Criticalとの繋がりが深い彼だが、今回はTexasのオフシュートであるWarm Communicationsから初のリリースとなる。とはいえ、ここに収められた2つのズタズタに切り裂かれて擦り切れたようなミニマル度の高いドラムンベースには相変わらず彼らしいスタイルが反映されている。 Strayが"Timbre"でデビューを飾った当時を彷彿とさせるような衝撃がこのEPに収められた"The Pursuit"からも伝わってくる。手がつけられないほど神経質なパーカッション・エレメントはまるで虫が這い回るかのようにステレオ空間を縦横無尽に行き来する。深く埋め込まれたベースラインは時折高速のアーメン・ブレイクがじらすように鳴らされるとその圧力を一気に解放する。通常のドラムンベースではまったく考えられない展開だが、Strayはその見事に統制された手腕によってじつにタイトで密度の高い、なおかつ新鮮なグルーヴを刻み続ける。同郷ロンドンのHalogenixとのコラボレーションとなるBサイドの"Poison"はAサイドでの握り拳のような力強さとはうってかわって各小節ごとに展開が広がり続けている。咳き込んでパチパチと跳ねるようなドラムはその隙間に埋め込まれたヴォーカル・サンプルと相まって、まるでミラーハウスの中にいるかのような錯覚をもたらす。ソリッドなフロア・チューンから脳内を掻きむしるようなトラックまで、Strayというプロデューサーはまさしく予測不可能なキャラクターをもっており、今回の"The Pursuit"でもやはりこのドラムンベース界随一の隠れた才能が持つ神秘的で混乱に満ちた世界観の一端を覗き込むことができる。
RA