Korg - Mini Kaoss Pad 2

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  • Korgは1999年にKaoss PadのファーストモデルKP1を発売したが、この触知性に優れた機材は、瞬く間に様々なジャンルのミュージシャン、プロデューサー、DJに愛される存在となった。その成功を受け、KorgはKaossシリーズとして、DJミキサーやビデオプロセッサーや音源などを継続的に発表してきており、最近では、昨年に同時に4系統のエフェクトをコントロールできるという製品Quadを発売している。今回のMini Kaoss Padシリーズは2007年2月に日本で発売、同年11月にはKaosillatorも発売され、両機はデザイン面と価格で「パートナーシップを組み、つまり補完しあう形として存在していたが、その後5年が経ち、そのパートナーシップが復活。今年のNAMMショーでKaosillator 2と一緒にMini Kaoss Pad 2が発表され、今回発売となった。 Mini Kaoss Pad 2(Mini KP2)はKaosillator 2と一緒の外見だが、黄色ではなくて赤色をメインとした筐体となっている。サイズと形状は一緒で、コントロールと各端子の数とレイアウトも似ており、両機ともに単三乾電池2本で動作する(初代は4本)。できるだけ小さく携行性に優れた機材を作り出すというコンセプトの下、Mini KP2の入出力端子はラインインプットから、ステレオミニジャックへと変わった。また独立したヘッドフォン出力端子の他、内蔵スピーカーも搭載されたが、これは出力が小さく、また音質的にも携帯電話のスピーカーと似ており、実用性という点では疑問が残る。 オリジナルのMini KPに実装されていたLEDディスプレイは、より視認性の高いOEL(有機EL)ディスプレイに代わり、いかなる状況下でも綺麗に表示されるようになった。また、各パラメーターはロータリーノブで入力するのではなく、両端に+、-が表示されているリボンコントローラー(VALUEスライダー)で行う。また、初代とは異なり、今回のMini KPはmicroSDカードのスロットが装備されているため、演奏データをWAVフォーマットで保存できる。カードに入れたオーディオデータは、本体のMP3プレーヤーとしての機能を使えば、再生(そして処理)することも可能で、Mini KP2はKaoss Padシリーズで初めての自己完結型製品と言える。 また、Mini KP2では内蔵マイクが実装されたため、ボーカルをライブで処理したり、音源とミックスしたりすることが可能だ。これは非常に面白い機能だが、実際にはやや使いづらい印象だ。内蔵マイクの入力には、スレッショルド値が高いノイズゲートが組み込まれているようで(値を変更できない)、ユーザーが本体を口にかなり近づけて大きな声で叫ぶか歌わないとマイクが作動しないようになっている。そして内蔵マイクの入力はライン入力とは併用できない設計になっているため、microSDカードから再生した音源のみがマイク入力とミックスすることができるようになっている。 Mini KP2には8個のバンク(フィルター、モジュレーション、LFO、ディレイ、リバーブ、ルーパー、ボコーダー、シンセ)に100個のエフェクトプログラムが内蔵されている。エフェクトは、初代をバージョンアップさせたもので、多くがKP3やQuadから引き継がれている。10年以上の歴史を持つKaoss Padシリーズの最新製品だけあり、サウンドクオリティは素晴らしい。可変フィルターやリバーブなどの基本的なエフェクトの他に、少し変わった独特のエフェクトプラグラムも組み込まれている。特に興味深いのは、ルーパーとスライスの組み合わせで、その中の1つ、Quadから持ち込まれたプログラムVinyl Breakは、タッチ・パッドを使ってスクラッチすることができる。またシンセエフェクトのバンクには、入力されるオーディオ信号に重ねあわせるのに便利なエフェクトが多数組み込まれている。 殆どのエフェクトにはテンポが備わっており、BPMはVALUEスライダーかTap Tempo機能のいずれかで設定することが可能だ。Mini KP2のBPMオート検出機能は素晴らしく、素早く正確に入力信号のBPMを検出してくれる。一度検出すると、あとは継続的にかつ計測し、自動的に調整してくれるので非常に便利だ。勿論、入力される信号がある程度の強弱を持った信号でなければいけないが、少なくとも我々のテストでは非常に優秀だった。 説明書によると、3つのプログラムを「お気に入り」として登録できるようになっているようだが、残念ながらこの機能を正常に動作させることができ なかった。 オーディオプレーヤーはMP3とWAVが再生可能で(パソコン経由でデータをカードに入れておく必要がある)、音楽制作に便利な機能もいくつか備わっている。各オーディオファイルにキューポイントが設定できるという機能で、これは再生時に便利だ。また、ピッチ/スピードをVALUEスライダーで±30%変更できる機能も備わっており、オーディオのBPMと入力信号のBPMを合わせることができる。ちなみにVALUEスライダーを使って、オーディオと入力信号をクロスフェードさせることも可能だ。これらの機能はシンプルだが非常に便利で、簡単なDJ用セットアップとして使うこともできるだろう(独立したヘッドフォンモニター用出力端子がついているのが理想だが、コスト面で不可能だったのだろう)。 結論として、新しいMini Kaossシリーズの1つであるこのMini KP2は非常に楽しい機材で、実際Kaossilator 2よりも優れていると言えよう。Kaossilator 2の面白さと直感性を持ちながら、パフォーマンスやプロダクションにおいての使用という面では、Kaossilator 2よりも優れた機能を持っている。KP3やQuadの開発から恩恵を受けたエフェクトは素晴らしく、豊富な種類を備えており、Kaoss Padシリーズ初の搭載となったオーディオプレーヤーの機能も上手く組み込まれている。Mini KP2は本質的にはエフェクターだが、ユーザーが自由にレコーディングできるインタラクティブなMP3プレーヤーとして考えることもできるだろう。機能の割には価格も安く、これはお買い得な製品だ。 Ratings: Cost: 4/5 Sound: 5/5 Versatility: 3/5 Ease of use: 4/5
RA