Rhauder feat. Paul St. Hilaire - Sidechain

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  • 数多く存在するエレクトロニック・ミュージックのサブジャンルのなかでも、ダブ・テクノほどフォーマットが固定化されているものも少ないだろう。このマーブルカラー・ヴァイナルを例にとってみても、多くの人々が知っているであろうダブ・テクノの流儀からそう遠く離れてはいない。Rhauder名義が広く知られるMarco Rhauderwiekはしかし、ダブ・テクノの定型においてファンキーな要素を注入することでそうした先入観に対し果敢に挑戦する。Ornamentsからリリースされた彼の最新作"Sidechain"は、2009年リリースの"No News"以来となるPaul "Tikiman" St. Hilaireとのコラボレーションだ。"No News"が夜明けに向かって浮遊する夢のようなサウンドだとすれば、今回の"Sidechain"ではしっかりと覚醒し、新鮮で直感的なサウンドを打ち出している。 Maurizio的な霧の中を切り裂き、"Sidechain"のオリジナル・ミックスはスナップの効いたハンドクラップや痛烈なベースラインでその鋭い牙を剥き出しにする。その上では、St. Hilaireがヒリヒリするようなトースティングを展開する(確固たる存在感と濃密さを示すヴォーカルには、絶妙なさじ加減のディレイがかかっている)。よりビートが強められ、ねっとりとしたメロディが絡み付くダブ・ヴァージョンはまるで蒸気で満たされた部屋に入り込んだような感覚を与える。Pop-A-Dubヴァージョンはオリジナルにおける明瞭な色彩を煮詰めて、ラジオエディット的に仕立てたような趣。非常に好ましい、活き活きとしたダブ・テクノに仕上がったこのレコードはきっとフロアでもしっかりとその存在感を示すはずだ。
RA