Function - Obsessed

  • Share
  • コズミックな感覚をトラックに埋め込むには、おそらく2つの方法があるはずだ。まずひとつは正攻法ともいえるアプローチで、伝統的なコズミック感覚を天体の暖かなオプティミスティックさや壮麗さを通して表現するというものだ。もうひとつはAdam XがTraversable WormholeやADMX-71といった名義で行ったアプローチで、燃え盛る太陽、生物の存在しない月、崩壊する衛星といったものをサウンドで表現してみせるというものだ。言い換えれば、宇宙の荒涼とした冷たさを表現するアプローチと言えるだろうか。ここに届けられたFunctionの最新12インチ"Obsessed"は前述の2つのアプローチを組み合わせ、厳然たる美しさを実現している。 タイトルトラックのイントロとアウトロはこうしたムードを創出するにあたって重要な役割を果たしている。宇宙の地平線に覗く一筋の光のように、シンセの音色はスペクトラムを飛び交い揺れ続ける。これらのシンセの音色はじりじりと抑制されたリズムが支配するトラックの中で、唯一のメロディ的要素を担っている。トラックの水面下で終始鳴り続けるブリープ音はメロディ的に展開しそうなぎりぎりのところで留まっている。Oscar Muleroの"Ceres"同様、メロディというよりはグルーヴ的な構成要素として機能しているのだろう。 SCBによるエディットはあくまでもリズム中心で仕立て上げられているが、中盤にシンセを配し、震える波のような緊張感を解放して(オリジナルに比べると)若干ドラマティックに味付けしている。Substanceによるリミックスは驚くほど控えめだが、それでいて濃密だ。まるでロレックスの腕時計のムーヴメントを見ているような精緻さを持ち、非常に正確かつ完全でなんとも魅惑的だ。ここでは衛星通信のようなブリープ音が中心になっており、 Substanceはその音色を非常に繊細に扱いながらフリーケンシーを変化し、やがてほぼ金切り音のように響く。この抑制された繊細さこそがこのリミックスにおける肝要な部分で、わかりやすいビルドアップを拒否しながら実に素晴らしい均衡状態を創り出している。
RA