Joy Orbison - Ellipsis

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  • Joy Orbisonはまだ短いそのキャリアにおいて、いくつものビッグ・チューンを世に送り出している。それらのほとんどの中心に置かれているのははっきりとしたヴォーカル的要素であり、今回の"Ellipsis"もまた例外ではない。今回使われている"we just used to like...do our own thing"というサンプルは往年の名ドラムンベース・デュオSource Directのインタビューから引用されており、そのサンプルの意味する内容はOrbison本人のスタンスともだぶっているようにも思える。Joy Orbisonはまさにその短いキャリアにおいて自分自身のスタイルを貫いてきたプロデューサーであり、彼自身のレーベルHinge Fingerから届けられたこの"Ellipsis"には一分の隙も見られない。今年始め、私はベース・ミュージックとハウスの間に介在する摩擦についての記事を書いたが、このレコードほどそれを如実に表しているものはないだろう。 それにしても、一体何がこれほどまでに"Ellipsis"をスペシャルな曲にしているのだろう?もちろん使用されているサンプルもそのひとつだが、それだけではこのストレンジさは説明しきれない。強烈なキラー・ベースラインも存在感を放っているが、それにしたって当代的なUKベース・ミュージックにあってはとりわけ異例というわけではない。ピアノ・ヒットはまるで曇り空のあいだを割って覗く太陽のようでもあり、その他のクリシェもこの曲に落とし込まれてはいるが、それらが醸し出す奇妙でレトロ・シック的なムードはその地下で振動するベースラインと組み合わせられることできわめてパワフルに響くのだ。ダブステップ・キッズたちも満足するヘヴィーさを持ちつつ、ハウス・ファンをも納得させる鋭さも持ち合わせている。ShedやMartynといったアーティストたちはここ最近シンセを多用したアプローチで往年の初期レイブ・サウンドを再現しようとしているが、Peter O'Gradyはそうしたアプローチを最も強烈な形でここに表現しているといえるだろう。 Shedといえば、彼はこのBサイドでHead Highとしてリミックスを提供しており、Head High名義ならではのピアノ・レイブ調の実験を展開している。想像以上に硬質でブレイクビーツ的な要素が強いリミックスで、隙間の詰まった痛烈なブレイクの下でピアノ・リフが押さえつけられている。オリジナルのしなやかさはここにはなく、その代わりに猛然たる荒々しさで置き換えられている。良い意味でオリジナルとかけ離れた、粋な解釈を見せてくれている。
RA