KiNK - Hand Made

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  • KiNKというアーティストはその屈折したオールドスクール感覚を落とし込んだ楽曲群(とりわけNeville Watsonとのコラボ作品)で注目を集める存在だ。しかしRush Hourからの最新作となる"Hand Made"ではそれまでの彼の作品群の印象を打ち破る豪快さを持っており、それでいて人間の体温を感じさせるような親しみやすさが同居している。くぐもった奇妙なギターループで始まり、やがてソリッドなキックが寄り添ってトラックはゆったりとしたスタートを見せる。パーカッションが広がりストリングスが染み渡ると、じわじわとグルーヴの力強さが増していく。それでも、その後に控えている爆発的な展開はなかなか予測できるものではない。それは子供の頃に見た花火のようでもあり、とてつもなく大きくもありノスタルジックであり、深い中毒性を持つ。かといって、KiNKは決して大げさな表現に走っているわけではない。ヴォーカルなしのダブヴァージョンも収録されているものの、やはりメイン・ヴァージョンを聴き返したくなってくるはずだ。トラックに重ねられたRachel Rowの囁くようなヴォーカルは固有のスウィートさを醸し出し、トラックとの不可分なコンビネーションを見せつけている。 それと比較すると、Bサイドの"Express"はひたすらサイドラインをキープするような意図が感じられる。列車の音のサンプルと、それを真似するように寄り添うドラムがトラック全体を支配し、ショウそのものよりもその合間の移動にしっくりとくるようなヴァイブを与えている。それでも、ずっしりとした量感のロウエンドは優れたサウンドシステムで威力を発揮するに十分な実力を秘めている。Bサイドにしておくには惜しいほどの好トラックではあるが、やはりAサイドの"Hand Made"の強烈さとカップリングされてはどうしても地味な印象になってしまうのは仕方ないところか。
RA