Noze - Body Language Vol.11

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  • 向上心に燃えるニューカマーがその才能を示そうとするとき、ブレイクを果たそうとするためには2つの障害がある。まずひとつは、ジョークめかしたギミックはその時だけは新鮮かもしれないが、やがて古くなることを覚悟しなければならない。もうひとつ、アーティスティックな資質を示すためにコメディ的な要素を抑制しようとすれば、それは同時に自分自身に嘘をついていることになり、その作品はつまらないものになりがちだ。ジョーカー(くせ者)がひしめくパリのハウス・シーンにおいて、Nôzeはそのオフビートでときにじわりと感染するようなシングル群でその存在感を示してきた。エキセントリックで不気味なアイデアに満ちた4枚のアルバムを経て、このフレンチ・デュオは再びその資質が見せかけのものではない事実を示す絶好の機会を得た。 Nôzeの片割れであるNico Sfintescuが手掛けるこのミックスCDは、Get PhysicalのBody Languageシリーズの11枚目にあたり、Nôzeとしては初のオフィシャル・ミックスCDとなる。制作に3ヶ月を要したというこのエクレクティックで複数の時代にまたがるトラックリストからもわかるように、おそらくNico Sfintescuはそのアーティスティックな資質をこのミックスを通して表現しようとしているのだろう。べつだん中道左派的なポジションを主張しているわけではないだろうが、Alejandro Mosso、Dave Aju、Marek Hemmann、 TiefschwarzそしてÂmeといった人々が造るハウストラックがこのミックスのバックボーンとなっていることはすぐに見て取れる。そこへMakossa & MegablastやLump、そしてNôzeとドラマーのEmiliano Turiによる新プロジェクトのトラックはミックスによりオーガニックなスパイスを加えるだけでなく、ミックスに興味深い展開を与えている。とりわけクリエイティブな部分をひとつ挙げるとすれば、Nicolas Jaarの"Russian Dolls"からフランス人ジャズ作曲家Zaniniによる"Tu Veux Ou Tu Veux Pas"へとシームレスに繋がり、さらにDennis FerrerとJerome Sydenhamの共作によるノスタルジックな"A Drumstick And A Light Future"へと流れるあたりだろうか。 ミックス全体により液体的な流れを与えるためにほぼすべてのトラックにエディットが加えられており、それだけでもこのミックスの制作のためにSfintescuが注ぎ込んだ時間と労力の大きさが窺い知れるだろう。まだ世間に知られていない彼の才能を示すという意味でも、このミックスは十分成功していると思う。さらに言えば、ミックスのイントロで使われているJeff Buckleyのアカペラなど、困難を伴うライセンス作業をやってのけたGet Physicalも称賛されるべきだ。とはいえ、純粋にサウンドの面だけで判断するならば、このミックスの選曲における示唆性に富んだ部分はともかく、ハウスのミックス作品としてはごく平凡であり、どこか決定的な魅力に欠けているような気もしないでもない。
RA