Still Going - D117

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  • リミックスを数多く手掛けながらも、Still Goingは決して自身のオリジナル作品も手は抜かない。彼らが手掛けるサウンドは、有り体に言ってしまえば祝祭空間そのもののための音楽だ。House Of Houseで知られるOlivier SpencerとEric "Dr. Dunks" Duncanのデュオは"Still Going Theme"や"Untitled Love"といったここ最近のDFAにおける最良の作品を手掛けており、その作品にはヴィンテージな繊細さとコンテンポラリーなサウンドデザインの両面が共存しているのだ。 ここに届けられた彼ら自身のセルフ・レーベル第1弾は、一聴しただけではヴィンテージな繊細さとコンテンポラリーなサウンドデザインは感じられにくいかもしれない。それでもなお、"D117"は際立った仕上がりであることは間違いない。LCD SoundsystemのドラマーとJames MurphyのDJパートナーでもあるPat Mahoneyをフィーチャーしたディスコ・ストンプにFischerspoonerのLizzy Yoderをヴォーカルに迎えたこのトラックはいきなりもの凄い迫力で迫り、それからの9分間は巨大飛行船のようにスムーズに駆け抜けていく。ベースラインはぐいぐいとグルーヴを前に押し出し、揺らいだストリングスが追い風となって怪物のようなギター・ソロが飛び出すとそこはシャンパンが飛び交う祝祭空間に取って代わるのだ。(両サイドのヴァージョンにそのギター・リフが入っていることがわかるはずだ。Bサイドのヴァージョンには"Guitar Mix"と銘打たれているが、その実ヴォーカルがミュートされているだけだ。)"D117"ではLiv Spencerの器用なソングライターとしての一面よりも、エンジニアとしての能力がより浮き彫りになっているようだ。この曲には彼がかつて手掛けた"Theme"での宝石を思わせるような小さくも輝くような美しさはないかもしれない。それを差し引いても、この曲は強烈な作品であり、昨今のモダン・ディスコ作品の中にあっても際立ったものであることは間違いない。
RA