Blocks & Escher - Shiver

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  • いわゆる「アトモスフェリックな」作風が幅をきかせるドラムンベースにあって、甘美でロマンティックな作風はかなり少数派だと言っていいだろう。Kokeshi等のレーベル、そしてASCといったアーティストたちはドラムンベースにおけるそうした柔らかさを持った側面を実証しようと努力してきた。2009年にロンドンのプロデューサーであるBlocksとそのレギュラー・コラボレーターEscherが"Heartshaped"なるタイトルのトラックをリリースしたとき、その努力はついに実を結んだ。そして、Blocks自身が立ち上げた期待の新レーベルNarrativesの2枚目として届けられたこの作品で、Blocks & Escherの2人はドラムンベースの「ソフト・コア」的なサウンドを再訪している。 彼らのデビュー作に収められていた"Sagan"というトラックは毒々しく仕立てた重金属サウンドだっただけに、今回の"Shiver"にはやや驚かされるが、それでも油断のならないインパクトはしっかりと秘めている。崩れかけた壁のようなパーカッションとドローン調のベースの背後には突然火の玉のようなLFOのうねりが飛び出し、重厚なストリングスと軽やかなフルートが確かな音楽性を感じさせる。ダンスフロアーのためだけではなく、映画のサウンドトラックとしても機能するタイプのドラムンベース、といったところか。B面ではASCが"Heartshaped"のリミックスを手掛けており、型通りのハーフステップに仕立てている(このサンディエゴ在住のプロデューサーはやはりくせ者だ)。心臓の鼓動を強調するかのようなビートとともに絡むギラギラとしたピアノのコードは以前にも増して切なく響く。170BPMのドラムンベースになじみのないリスナーであっても、精巧なディテールと豪奢なまでにアトモスフェリックなBlocks & Escherらしい資質は感じ取ることが出来るだろう。非主流的なドラムンベースを手掛けながらも、Narratives Musicのこれまでの2枚のリリースはすべてハズレなしだ。
RA