Various Artists - Uncanny Valley 010

  • Share
  • ドレスデンのUncanny Valleyから届けられた10枚目のリリースは、このレーベルにおけるこれまでの作品を絶妙なかたちで集約している。大まかに言ってしまえばディープハウスということになるのだろうが、ディープハウスそのものをパロディ化したかのような異形のものだ。たとえば"Kill Bill$"のようなトラックでは鋏をチョキチョキと開け閉めするようなサウンドが威張り散らしていて(言っておくがそれはかなりグルーヴィなサウンドだ)、その鋭い輝きはどろどろとしたボトムエンドを明確な対比を成し、なんとも心地よい不安定さをもたらしている。いっぽうSteve Kasperの"Unvexed Dub"は苛立ったようなサウンドでせわしなく変化を続けながらディープさや快活さ、無表情さとダビーさの間を行き来し続けていて、その真ん中あたりでは奔放なハーモニーが挟み込まれている。 "S51"のバックでは呻くような303が骨格をなし、巻き舌のようなキーボードと粒状のシンセがとめどなくぶつかり合いながら波を作っていく。唐突に繰り返される"I'm sure you'll find this amusing, but I'm afraid of the dark"というヴォイス・ループは予想外だが、これほどどろどろとした悪辣なアシッドを背景にしながらも非常に明るくオプティミスティックなメロディが組み合わされているところも意外だ。だが、驚きはまだまだ終わらない。"The Three Tress"においてSandrow M(C-Beamsのメンバー)はミステリアスで煌めくようなディープハウスに断片化されたガラージ調ヴォーカルを組み合わせているのだが、一見奇妙なものに思えるこの組み合わせがこれほどまでに見事に融合するとはまさしく驚きだ。しかし、この種の驚きこそUncanny Valleyが得意とするところなのだ。そう、聴き慣れているはずのものを意外な方法で新鮮に聴かせるということだ。
RA