Squarepusher - Ufabulum

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  • このアルバムを一言で表すなら「疾走感」。カーレースを観覧するかのような一直線に突き抜けていく清々しさ。今までのネットリとした絡みつく横ノリ感覚が抜け、ひたすらデジタルな爽快感を与えてくれる。冒頭の"4001"からSquarepusherならではのツクツク啄まれるビートの上に、哀愁漂いつつも前向きなメロディーが冴え渡る。ファーストアルバムの”Squarepusher Theme”をエレクトリカルにバージョンアップさせたかにも聞こえ、すんなりとアルバムの世界観に没入させてくれる。次の”Unreal Square”は、音が重なり合う事によって徐々にスピードアップしていく、8ビット音チューン。前半はダブステップの影響を感じられるハーフステップのビートと低音の鳴らし方だが、後半はビートが多段に重なって加速されていくところが面白い。違和感無くノンビートのインタールードが差し込まれて耳を休ませつつ、後半しつこいぐらいに音をグリッヂさせまくる"Drax 2"も暗さの中で足掻く電子音が印象深い。曲ごとに明確なアイデアが盛り込まれ、暗闇の中でチカチカと点滅する光が差し込むような世界観で統一されている。ドラム&ベースからキャリアをスタートしたがクラブトラックには寄り添わず(DJが繋ぐことを想定しない曲調)、ライブ・パフォーマンスを主体とするエレクトリックミュージック・アーティストとして独自の路線を歩んでいるSquarepusherならではのアルバムだ。 近年のライブでは、ヘルメットをかぶったレーサーさながらの本人がLEDが敷き詰められたブースに立ち、本人が開発したヴィデオ・シンセサイザーによるLED映像が演奏と完全同期するという、新境地のライブを発表。その映像はアルバムのジャケットのような単色で抽象的な映像が多く見受けられた。彼の他にもRichie HawtinことPlastikmanも、LED映像と曲を同期させるライブパフォーマンスを近年披露しているが、こちらは具体的なイメージが映しだされ、アーティストによって見せ方が違っていくるのも興味深い。ロックなどの生楽器を使うジャンルに比べ、演奏者の身体的な動きのダイナミズムが削がれることの多いテクノ系アーティストだが、一流のアーティストとなると視覚的な快感にも挑戦をしている。毎回アルバムごとにテーマが変移していくので、ライブ含めて次回もどういった打ち出しをするのか気になるところ。
  • Tracklist
      01. 4001 02. Unreal Square 03. Stadium Ice 04. Energy Wizard 05. Red In Blue 06. The Metallurgist 07. Drax 2 08. Dark Steering 09. 303 Scopem Hard 10. Ecstatic Shock
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