Hideo Kobayashi - Snow Monkeys

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  • Hideo Kobayashiはテクノと結びつけて考えにくい名前だと思っていた。たとえば彼が2010年にリリースしたアルバム『Yellow Diamond』はウェストコースト・ハウスやフューチャー・ジャズを中心にクラシックの要素を含んだものだった。しかしここに届けられた『Snow Monkeys』はスピーディなテクノ作品であり、ある種の驚きである。しかも、当代的なヘヴィーで硬質なテクノと言うよりは90年代当時のエナジーを感じさせるようなルーツ回帰志向の強い作品なのだ。強めに打たれるハイハットを別にすれば、ここに含まれる微細なループのすべてがそうしたルーツ回帰的な志向をことさら強調している。もとは人間のものであろうヴォイスが何らかの単語を発しているが、その輪郭はひとつのサウンドとして変化させられ、脈動するキックに一体化されている。その性急さが支配するグルーヴにおいて一瞬の小休止が訪れるのは不気味なほど異常に短いブレイクの瞬間で、ここではかすれたようなフルートが数小節だけ挟み込まれるものの、トラックは再び強いビートと共に潜り込んでいく。 A.Mochiはオリジナルをかなりの部分で活かしたリミックスを披露しているが、よりスリークかつ徹底的に仕立て上げている。オリジナルでは密集していた中域をすっきりさせ、トラック全体をディレイとリヴァーブのダークな霧で包み込んでいる。最も重要なのは、オリジナルで目立っていたチープな質感のクラーヴェの音色がここでは切除されているところだろう。この痛烈なEPは、Hideo Kobayashiにとってハウスとテクノの境目が非常にシームレスなものであることを示している。
RA