Tokyo Prose - Tokyo Prose Remixed

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  • 昨年、Samuraiよりエレガントで美しいドラムンベース観が投影されたごく一握りのトラックをリリースしてデビューを飾ったニュージーランド出身のSam Reed。生楽器のサンプルと繊細なドラム・パターンを組み合わせ、その背後にCalibreからの影響を偲ばせながらもよりゆったりとしたラフさを感じさせている。2枚に分けてリリースされていた「Introducing EP」の収録曲から絶好のタイミングと絶妙なリミキサー人選によるリミックスEPが今回リリースされることとなり、ここではTokyo Proseの壮麗なサウンドにおける別の新たな表情が提示されている。 まず"Echoes"のリミックスを手掛けるのはSynkro。オリジナルではごく普通だったパーカッションを解きほぐし、その痛烈さはそのままにしつつも不規則に並び替えることでモールス信号が170bpmで鳴らされているようなサウンドに仕立て直している。控えめながらも心の琴線を揺さぶるコード進行もSynkroの手にかかれば溜め息をもよおすほど美しいシンセに置き換えられ、細心の注意が払われたベースラインはグルーヴをドライヴするというよりは地面にぴったりと貼り付いているかのようだ。Synkroはそのスリリングかつ感傷的な作風で知られたプロデューサーだが、この"Echoes"のリミックスに関して言えば彼のキャリア中でも最も強力かつ非常に巧みなものであると言えるだろう。 もうひとつのリミックスを手掛けるのはさらなるドラムンベース界の異端児であるConsequence。Exitに所属する彼はさわやかな"LPK Sound"の歪んだグリッチ調のビートを金属質のアルペジオで包み込み、彼の最新アルバム『Test Dream』の延長線上にあるIDM的な解釈を施している。Synkroのリミックスに比べると派手ではないものの、こちらも非常に楽しめる仕上がりだ。この2つのリミックスはドラムンベース界の新星による最初の一連のリリース群を締めくくるに絶好なものだろう。
RA