Patrice Scott - Orbital Bliss EP

  • Share
  • 2006年の設立以来、Patrice Scott率いるレーベルSistrumはひたすら真摯にディープハウスを追求してきた。しかし、もしディープハウスが特定のコードやテンポを単に指し示すだけの音楽だとすれば、このデトロイトのプロデューサーが手掛ける音楽はその既定の枠組みから軽々と飛躍しているとも言えるだろう。Sistrumから新たに届けられた「Orbital Bliss」と題されたScottの最新EPではそのサウンドにさらなる磨きがかかり、収録された4つのトラックがそれぞれ独自の個性を放っている。 Scottがこれまで展開してきたリリースにおいて、宇宙からのモチーフやインスピレーションが大きな部分を占めていることは彼自身も認めているところだが、このEP「Orbital Bliss」ではその宇宙に対する興味がいまだ尽きないことを自ずから証明している。まず"Tones & Things"はほとんどビートレスだが、続く"Oberon"では非常にアトモスフェリックで、彼らしいハードなリズムワークが炸裂している。EPのタイトル・カットとなる"Orbital Bliss"はこれまで通りの彼のスタイルで、小惑星の片隅を探索しているようなムードを醸し出す。同曲の"ReChord Version"ではしかし、再び意欲的な試みを見せ、ハウスとテクノの間に横たわる空間を巧みに操作してみせている。彼の新しいリスナーはこの作品の驚くべきサウンドの豊かさに心奪われるだろうし、昔からのファンにとってもPatrice Scottらしい美しいスペース・ジャーニーが楽しめる1枚であろう。
RA