Various Artists - Arma02

  • Share
  • かつてトランスが圧倒的な勢力を誇っていたロシアのエレクトロニック・ミュージック・シーンでは、現在実に興味深い地殻変動が起きているが、そのアンダーグラウンドでの動きはロシア国内と言うよりはその外側の人々に良く知られている。徐々に拡大を拡げるロシアのアンダーグラウンド・シーンへ最近新たに名を連ねたのがモスクワの名クラブであるArma17のクルーが運営するレーベル、Armaだ。ロシアきってのディープな若手テクノ・プロデューサーAnton Zapをはじめとしたアーティストたちをフィーチャーした1枚目のコンピレーションに続き、2枚目のリリースとなる本作でもAlex Danilov、DJ Djungl、Venedikt Reyf & Paul Eidnerといった注目の才能たちが集っている。 Aサイドの2曲を手掛けるAlex DanilovはSamllvilleのお株を奪うロマンティックさと素朴さを持ち合わせた素晴らしいディープハウス・トラックを披露。"Deep S"では一貫して霞がかった柔らかいムードをキープしつつ、クラップとカウベルで引っ張られるグルーヴの上で湿り気を帯びたパッドが抽象的なニュアンスを与えている。いっぽう、"Down S"ではよりキックドラムの存在感が増し、渦巻くようなグルーヴに誘いながらそのメロディが深い余韻を残す。続くBサイドではまずDjunglが"Rakatakata"においてローテンポのダーティなベースラインと壮大で美しいキーボード・パターンを同居させ、Venedikt Reyf & Paul Eidnerは"Sexspionage"においてじれったいほどスローな7分間のハウス・トラックでトランペットやジャジーなコード、女性のヴォイスによるラップが睦まじく戯れつづけている。このEP全体としてわかるのは、ロシア産のハウスは暖かで親しみやすさを持っていると同時に、そこにはある種の冷たさと厳格さが興味深く同居しているということだ。
RA