Machinedrum - Nastyfuckk

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  • 過去10年にもわたり多作なリリースを続けているTravis StewartことMachinedrumは、着実な進歩を毎リリースごとに重ねている。簡潔に言えば、彼が新しいリリースを世に出す時、その内容を予測するのは不可能だ。最初のリリース、"Want To 1 2?"はハウス仕立てのヒップホップという趣だったが、彼は特定のスタイルには決して固執せず、そこからさらに"Alarma"での饒舌なポップ・スタイルにまで飛躍してみせてもいるのだ。その彼の最新作となる「Nastyfuckk」において、Stewartは前作"SXLND"でのヴォーカルサンプルにまみれたバウンシーなフットワーク調のリズムを今回は穏やかな複雑さにすり替え、またしても軽やかな自己変革を披露してみせている。 ブレイクコアを思わせるピッチと豪快な展開で進むタイトルトラックは冒頭から荒々しく迫るが、無慈悲なシンセが登場するまではごくタイトに展開する。今回のEPにおける荒々しさは過去の彼の作品に比べても異例と言うべきで、"What U Wanted 2 Feel"といったトラックではMachinedrumのより気骨のある、グライム的な一面が窺える。冷淡な質感や不穏なヴォーカル・サンプルも相まって、このトラックはフロア・キラーというよりはヘッドフォンでのリスニングに向いているようにも感じる。この不一致性こそが彼の作品で最も興味深い点であり、「Nastyfuckk」はフロアを沸かせる側面を持ちながら、一人で孤独に向き合う音楽としても機能するのだ。
RA