Uner - Palua

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  • ヴェテランのスペイン人トラックメイカーUnerが手掛けたこのEPのAサイドに収められた "Pallene" におけるキックの深さはそれだけでこのEPの価値を決定付けている。そのキックはトラックの長い導入部を支配し、うねるようなパーカッションがフックを構成するころにはリスナーはそのドラムの律動に心奪われているはずだ。柔らかに入ってくる5つのノートで構成されたエレクトリック・ピアノのフレーズはリズムのステディさの上で自在に動き回り、トラックの表情を徐々に変化させる。縦横無尽のキーボード・フレーズ(リズムは厳格な4/4でありながらそのフィーリングはラテン的だ)やスウィープするシンバルがそこかしこに散りばめられ、ビートは抜き差しを繰り返しながらも、このトラックのグルーヴはまったく揺るがない。トラック単体で聴いても、DJセットの一部として聴いても、はたまたヘッドフォンで聴いても、このトラックの鮮烈さはリスナーの頭の中にこびり付き、聴き返すたびにその魅力は増して行くはずだ。 Bサイドの "Cocoua" の冒頭でも聴くことができるコンガはどことなくカウベルに微細なクリックやスウィープを加えたもののようにも聴こえるが、このトラックの主な聴き所はその後で入ってくるきわめて柔軟性の高いベース・リフだ。非常にスローにビルドアップする(もしくはビルドアップしないまま終わる)、じわじわとした展開のトラックだが、それを構成する音色はどれも実に瑞々しい。もしあなたがクラウドの前でこれをプレイする機会があれば、そのセットを実に興味深い形でキープしてくれるトラックになるはずだ。
RA