Peter Van Hoesen - Transitional State

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  • Peter Van Hoesenのスタイルを簡潔な言葉で示すとすれば、それは「一貫性」と「ダイナミック」の2つになるはずだ。何度となく、このベルギー人トラックメイカーはそのスタイルを華麗に変化させつつ、クオリティには一切の妥協を許さなかった。この「Transitional State」においてもそれはまったく陰りがなく、"North 6th"のようなビッグなトラックはなくともややアブストラクトなアイデアを注ぎ込んだ内容となっている。Marcel Dettmann "Translation Two"のように、このEPのファーストトラック"Nineteen Continued"は液体のようなシンセの雫によって導かれている。Dettmannの"Translation Two"にしろPVHのこのトラックにしろ、どちらもダンスフロアーを見据えたものであることに間違いはないが、こちらのほうがより厳格なムードをたたえている。硬質なスネアと沈む込むようなキックの間を自在に跳ね回るゲル状のような音色は、常に変化と収束を繰り返す。 "Transition State 1"と"2"は平均的なクラブトラックなのか、シリアスなエクスペリメンタル・トラックなのか判断がつきかねるところがある。"Transition State 1"は狂気の輪をよろよろと辿るようなアナログ・ベース・シークエンスがその足下で微細で金属質な震動を受けているかのようだ。中盤に差し掛かるとその震動は収まり、ベースはにわかに力強さを増していく。"Transitional State 2"は4/4の律動が入り、より力強さが印象づけられる。もしダンスフロアーでプレイされることがあるとすれば、確実に混乱を引き起こすはずだ。スナップの効いたベースと、無秩序でささくれ立ったメタリックなノイズも相まって、このいびつなリズムはそう簡単には乗っかることが出来ない。いっぽう、"Admonition"では快適なダウンテンポを提供し、このEP中でも最も穏やかな瞬間を用意している。カラフルだがどこか色褪せたようなコードがぼんやりとスイープし、不協和音のようなリズムがその上で狂ったような渦を描いている。Machinedrumの作品をちょうど半分のピッチに落としたかのようなトラックだが、言うなればこれもまたPeter Van Hoesenの新たな変化のひとつなのかもしれない。
RA