eastaudio SOUNDSYSTEM & PART2STYLE presents SOUND SLUGGER

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  • 印刷工場跡地のギャラリーにサウンドシステムが持ち込まれ、レゲエ、ジャングル、ドラムンベース、ダブステップなどベース・ミュージックを中心にしたDJが出演する、国内で唯一無二の音圧が体感できるパーティーが一夜限りで行われた。「Bass Musicは聴くモノではなく体感するモノ」というパーティーのキャッチコピーに嘘偽りなく、メインフロアに行くまでに低音の振動で建物が軋む。今までに体感したことにない低音がフロアで待ち構えていると思うと、テンションがあがって表情がニヤケてきてしまう。ゆっくりメインフロアの扉を開けると、縦3メートル、横10メートルのサウンドシステムが……! その壁のようなスピーカーから発せられた、低音による空気の振動がフロアに充満する。悪酔いするような低音ではなく身体が欲してしまう振動の快感によって、その場から動けなくなり立ち尽くしてしまった。この日は、音楽を「聞く」ではなく「体感」する客がひしめき、強力な音波の振動に身を任せる音響体験に酔いしれた。ちなみにエントランスで耳栓が配られるというおもてなしもあり、轟音に対する初心者への気遣いも。 元々、2008年代々木公園で始まったサウンドシステムクルー、eastaudio。世界最大級のベース・ミュージックのフェスティバル、Outlook Festivalに日本人アーティストが出演することになりオーガナイザーのtocci氏が同行。海外の成熟したシーンに衝撃を受ける。世界的なムーブメントになっているベース・ミュージックが国内で楽しめる環境が少ないために、自分たちで立ち上げようという意気込みに至った。また、しかるべき低音が出る音響設備でパーティーを行わないと、技術的には優れている日本人アーティストが音響面で育たないという先を見据えた視野で行われ、サウンドシステムカルチャーを啓蒙している。 個人的なパーティーのピークは、DJチームのHabanero Posseが今話題のJames Brakeをかけた瞬間だ。James Brakeは、フォーキーな音楽として評価されている部分もあるが、この日の体験で一転する。低域が再現されるウンドシステムでしか体感できない、巨大な音の塊が押し寄せてきたといえば良いのだろうか。ラジカセやPCのスピーカーでは再現されることのない、地鳴りのような異様な低音が轟き、フロアは歓喜の声で満ちた。適切な音響で聴いた人は少なかったのだろうし、自分も彼の作品の真価に触れられたことで、元の曲の聞こえ方が変わった。海外のベース・ミュージックのアーティストが表現しようとしている、音の世界観を体感できるパーティーが日本には非常に少ない。このパーティーを期に日本でもサウンドシステム単位でパーティーを選ぶ文化が定着してほしい。
RA