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  • クオリティの高いパーティーを開くのは、簡単ではない。出演者に話題性があったり、会場の知名度が高いだけでは、いざ行ってみて期待外れということになりかねない。パーティーを成功させるのは難しいことだ。継続するとなるとなおさらである。 しかしDen氏とPi-ge氏が主催するパーティーFUNKTAXIは、自らもDJ、トラックメイカーとしてドイツ等世界で評価される二人が、信頼をおけると判断した一級のゲスト陣を招致し、麻布十番のクラブWAREHOUSE702にて月一のペースを守って開催されている。 今回はDen氏も所属するレーベルop.discを田中フミヤ氏、吉田タロウ氏とともに運営する半野喜弘氏/Radiqと、今年テクノ、ハウスシーンの最高峰レーベルPerlonから出したアルバムが絶賛され、DJとしても素晴らしい実力の持ち主であるMargaret Dygasがゲストとして出演した。 先ずDJを行ったのは野外フェスTAICOCLUBの運営にも携わるhyota,氏。バラエティ豊かなグルーヴを鳴らす安定感のあるプレイで、Den氏にバトンを渡した。個人的には来年のTAICOCLUBに出演することがアナウンスされたRicardo VillalobosとMotor City Drum Ensenbleの曲がいいタイミングでプレイされ、思わず笑みがこぼれた。 続くDen氏は抜群の安定感と独特の高揚感を与えるレコード捌きが魅力のDJ。今月も発売したばかりのレコードからシカゴハウスのクラシックまでを一つのグルーヴとしてまとめる、抜群のスキルは健在で、フロアの熱量を一段と上げていた。 ゲスト一発目のRadiqは、今回パーカッションにHiroaki "Chang-woo" MURASE氏を迎えてライブを行った。これまで半野氏はバンド、エレクトロニカ、また他のアーティストのプロデュースなど幅広く、独創的な作品を提示してきたが、Radiq名義での活動はダンスミュージックでありつつ、氏であるルーツのファンク、ソウルに忠実なものだと感じる。今回のライブも、Macbook Proとミキサーというシンプルな、決してフィジカルとは言いがたいセッティングでありながら、二人のライブはパーカッションが飾りにならず、Macbookから出る音がただのバックトラックにもならない、プレイヤー同士の息の合ったセッションとして成立していた。 先日公開された映画『UGLY』の共同監督、音楽を勤める等、創造力の尽きないアーティストである半野氏は、今回のライブセットは全て新曲、未発表曲とのことで、プレイされたトラックは構成からキックやハイハットの音一発に至るまで、そのどれもが言うまでもなく抜群のクオリティ。圧巻のセッションであった。   半野氏のライブが終わったところで、Margaret Dygasがややトーンを抑えた渋めのミニマルハウスでDJをスタート。Radiqが最高潮に盛り上げたフロアを一旦クールダウンして、自分の色に染めていくようなプレイを展開。やや単調ではあるものの、ダンサーたちを着実に魅了していた…のだが、ここからというところで諸事情により、急に音を中断するハプニングが発生。折角の熱も覚めはじめ、「これで終わり?」といった雰囲気が漂いはじめた。 ひとまず問題が解決し、少し時間を置いて音量が段々と元に戻ろうかというところで、気鋭のアーティストMargaretの真骨頂が発揮されはじめた。彼女のリリースしている作品同様、淡々としつつも繊細な変化が身体を刺激するようなグルーブを保ち、普通のDJであればピークにかけられないLosoulやJens Zimmermannの曲を用いて、曲の緩急を自在に操りフロアを興奮のるつぼに陥れる。その技量はMarcel DettmannやZipといった達人が評価するのも納得のもの。勿論、彼女のキュートさと、かかる曲のギャップに魅了され、ブースに釘付けになるダンサーも多く見られた。 Margaretのプレイが絶好調のまま、朝方になるとDen氏もブースに入り、もはやFUNKTAXI恒例であるゲストDJとDen氏のB2Bがそのままスタート。互いに高い実力を持つDJ二人による、非常にスムーズなやりとりが展開され、最期はこれまた定番のアンコールに、Den氏がサービス精神たっぷりな選曲でお返し。パーティーを締めくくった。 FUNKTAXIの成功の要素は、上記の出演陣の素晴らしさに加え、WAREHOUSE702のスタッフとの連携や、音へのこだわりももちろん大きい。このパーティーで使用されているDJミキサーは国内メーカーVESTAXの最高峰モデルR-3というこだわりの逸品。それだけにスタンダードモデルとは違う操作性にゲストDJが少々戸惑っている場面も見られる。しかし、それに対してPi-ge氏やDen氏がフレンドリーに説明する光景はこのパーティーの裏の名物と言える。 先述したオーガナイザー二人の“信頼”とは、「この人を呼べば客を沢山入れてくれるだろう。」というような信頼ではなく、「この人を呼べば楽しいパーティーを一緒に創れるだろう。」という信頼であることは間違いない。それは、FUNKTAXIに実際に足を運べばわかるだろう。今後も月一で、素晴らしいゲストを迎えて開催していくとのことで、来年もいっそう期待が高まる。
RA