- 10年近くの間、Peter Van Hoesenはテクノの最先端を走り続け、才能ある同志たちをキュレートする卓越した存在として評判を築いてきた。自身のレーベルTime To Expressから昨年リリースされたミックスコンピレーション『Stealth』(英語サイト)は意欲的なプロジェクトだった。Peter Van Hoesenによるきめ細やかな作品が数多く収録された一方で、それぞれアツい視点を持ったアーティストたちもフィーチャーされていた。残念ながらコンピレーションの全曲がノンミックスでシングルカットされる予定はないようだ。そのため今回のEP3枚はとりわけ重要になってくる。
「Stealth 1/3」と「3/3」では、Van Hoesenによるレンジの広いトラックがいつもの綿密なサウンドデザインと共にフィーチャーされている。まずはBee Mask "Headband"のリミックスだ。実験的なアンビエントとシンセの要素とテクノが相互作用している素晴らしい例だ。原曲は未発表のままであるという事実とボトムの効いたリズムは別として、光り輝くパッドや無邪気にさえずるモジュラーサウンド、そして、ビープ音からは、どこまでがBee MaskとVan Hoesenなのか区別が付けられない。"Breach"は強烈かつ高品質なDJツールで、ワイドに広がるシンセによって緊張感がしばらく保たれている。「Stealth 3/3」ではドラムサウンドを多用した"Shadows & Concern"が不気味な振動をフロアにもたらすだろうが、"Unicorn"のレイヴィーなブレイクビーツの方が強力だ。
「Stealth 2/2」には尺の長いトラックが2曲収められている。まずはVoices From The Lakeによるワイルドな"Zulu Vortex"だ。重要な役割を担っているのは、オフビートに配置されたウネるアシッドサウンドとジャングルの奥深くにいるようなアンビエンスだ。しかし、同トラックにはふたりのトレードマークである低域使いが施されているにもかかわらず、個人的には重々しいパーカッションを使った"Reptilicus"や"Sentiero"といったトラックの方が好みだ。急上昇中の日本人アーティストWata Igarashiによる"Night"は極上のトリップが味わえるトラックだ。表情豊かなシンセ空間を上昇していくアシッドリフが大胆に共振する同トラックは、彼がこれまで制作してきた中でもとりわけ強力な作品として位置付けられる。
コンピレーションに収録されていた他のトラックが含まれていないのはとても残念だ。同コンピレーション序盤のゆったりとしたトラックや、"Imaginary Softwoodsによる壮大なアンビエントフィナーレ"Aura Show"もノンミックスの状態でリリースされてほしかった(僕なら"Shadows & Concern"に代えて、同系統だがさらに素晴らしい"Prime Symmetry"を少なくとも収録していただろう)。とはいえ、モダンテクノのファンであれば本シリーズを通じて存分に楽しめる要素が見つかるはずだ。
Tracklist1/3:
01. Bee Mask - Headband (Peter Van Hoesen Remix)
02. Peter Van Hoesen - Breach
2/3:
01. Voices From The Lake - Zulu Vortex
02. Wata Igarashi - Night
3/3:
01. Peter Van Hoesen - Shadows And Concern
02. Peter Van Hoesen - Unicorn