Native Instruments - Reaktor 6

  • Published
    Jan 21, 2016
  • Released
    September 2015
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  • 大幅なバージョンアップなしで、熱心なユーザーベースに対して10年間 “現役” であり続ける音楽系ソフトの数は多くないが、Native InstrumentsのReaktorは、膨大なユーザーライブラリと専用にデザインされた製品群の定期的なリリースによって、それを実現した。Monark、Razor、Skanner XT、Prism、そして素晴らしいMolekularなどがReaktorを新鮮に保ち続け、プロデューサーたちに自分独自のインストゥルメントをデザインさせるチャンスを幾度となく与えてきたのだ。とはいえ、そのReaktorの新バージョンの登場を数多くの人たちが噂していたのだが、昨年9月についにNative InstrumentsがReaktor 6をリリースした。そのReaktor 6では新しいフレームワーク、Blocksをはじめ、大量のアップデートが行われている。 その変更の多くは、パッチングのヴィジュアルとワークフローの向上を目的としたものだ。プロパティとブラウザは大幅に改良されており、ブラウザに関してはMaschineやKomplete Kontrolなどの最近のNI製品のスタイルに準拠しており、ストラクチャーもヴィジュアルが分かりやすくなっている。その中で最も目を引くのが新しくなったカラースキームで、個人的には非常に魅力的に感じられた(旧来のカラースキームが好きな場合もオプションで選択可能)。インストゥルメントやマクロは、ストラクチャー内で2種類の表示オプションが与えられており、Compactは旧来のビュー、Flexibleはポートやモジュールにより細かな説明を加えることができるビューになっている。モジュールの名称変更も以前より簡単になっており、プロパティを経由することなく、ストラクチャー上でモジュール名をダブルクリックするだけでOKだ。 そして、Reaktor 6ではヴィジュアル以外にも重要な変更が加えられている。恐らくプライマリレベルにおける最大の変化はTable Frameworkで、これによってこれまでとは違う形でサンプルデータが扱えるようになっており、ブラウザ上からReaktorにサンプルをドラッグ&ドロップして、サンプルデータを自分の好きなマクロやコアで使用できる。また、Table Frameworkのデータはスナップショットとしても保存できるため、プリセットとオーディオサンプルの関連づけが簡単になった。また、コアレベル(プライマリの下層レベル)に関しての最大の変化は、コントロールシグナルとオーディオの扱いが同等になっている点で、ユーザーはオーディオをコントロール用信号として使用できる。これはあらゆる上級レベルの音声合成に便利だ。コアではセルにも便利なツールがいくつか追加されており、複数のデータをまとめられるBundle WiresやMaxのオブジェクトのように、ワイヤレスでデータが送信できるScoped Busesなどがある。Reaktorユーザーの多くはこれらの新機能を使用しないかもしれないが、これらの機能を使用したアンサンブルで間接的に恩恵を受けることになるだろう。 Reaktor 6のあらゆるユーザーにとって嬉しい新機能と言えるのが、今流行りのEurorackモジュラーシンセにインスパイアされた新しいReaktorインストゥルメントBlocksだ。Blocksは新しくなったブラウザからロードされ、各モジュールを好きなように並べ替えたり、見事に3Dモデリングされたノブ/フェーダー/ボタンを調整したりできる専用のパネルが用意されている。ひとつのBlockから別のBlockへの信号の接続はストラクチャー上で行うが、画面分割が採用されているため、パネルとストラクチャーを同時に表示することが可能だ。前述した通り、Reaktor 6ではオーディオとコントロールシグナルが同等に扱われるため、Blocksでも簡単且つ楽しく色々と試すことが可能だ。ほぼすべてのBlocksのモジュールにはモジュレーションインプットが備わっており、パネル上でパラメーターに信号を様々な数値でアサインできる。これを行うには、パネル上のAかBのアイコンをクリックして各パラメーターのモジュレーションスライダーを表示して、マウスでスライダーを調整するだけでOKだ。このよく考えられたデザインは、アッテネーターやミキサーモジュールの必要性を大幅に削除しており、また、ほぼすべてのBlocksモジュールに導入されていることから、ユーザーの使用頻度は高くなるはずだ。 Reaktor 6にはすぐに始められるBlocksモジュールが大量に用意されており、それらは8つのカテゴリに分類されている。Monark、Driver、Roundsのような既存のNI製インストゥルメントをベースにしたモジュール群、NI All-STARSもあるが、Bento Boxのようなその他のモジュール群については、パワフルなモジュラーシンセを組み上げるために必要なすべてのコンポーネントが含まれたものになっている。また、当然ながら、より大きなパッチングをする際に便利なシグナルミキサーなどのユーティリティモジュールを集めたUtilというカテゴリも用意されている。そしてNI側は、Blocksのデフォルトライブラリを補完すべく、ユーザーが自分だけのモジュラーシンセが作れるようなテンプレートやドキュメントも用意している。Reaktorのユーザーコミュニティはこのサービスを上手く活用しており、既に160以上のBlocksが存在している。Michael HetrickSandy SmallによるBlocksなど、素晴らしい内容を誇りながらも無料で提供されているものもある。Reaktor 6のユーザーにはモジュラーパッチ作成に関して豊富な資源が用意されていると言えるだろう。そしてその数は今後更に増え続けていくはずだ。 Reaktor 6は特筆すべき点が多く、低価格、アップデートされたユーザーインターフェイスやワークフロー、サンプルと音声合成能力の向上、そしてBlocksなど、新機能のすべてがReaktorのアップグレード、もしくは新規購入を考えているあらゆる人にとって魅力的だ。今回のテストでは、問題に感じたのは2点だけだった。ひとつはCPU消費だ。モジュールによってはかなりのCPUパワーが必要とされるため、Blocksを使用するユーザーの多くは、各自が所有するDAWのバウンス/フリーズ機能に頼ることになるだろう。ふたつめは、Blocksのモジュールをストラクチャー上にドラッグした際、パッチング前の段階からサウンドが劇的に変化してしまうというバグだ。このような多少の問題はあるが、Reaktor 6はユーザーのテクニカルな知識レベルを問わずオススメの製品だ。 Ratings: Sound: 4.7 Cost: 4.8 Versatility: 4.9 Ease of use: 4.5
RA