Call Super - Migrant EP

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  • Call SuperによるEP「Migrant」の両面を聞くと、延々と続いていきそうに思える。ベルリン在住のJR Seaton(Call Super)が今年前半に発表した「Fluenka Mitsu」で見事だった惜しみの無いふくよかなトラックが、今回の両トラックでも実現されている。しかし今回は、鳥の鳴き声、マリンバのパターン、麗らかな空気など、バレアリックなタッチやアンビエントの静かな輝きと共に提供されている。それはリズムが軽視されているということではなく、"Migrant"と"Meltintu"のどちらにおいても、4つ打ちのキックと軽めのパーカッションがとても効率的に用いられている。リズム面においては、さえずるアルペジオとガス状のエフェクトを伴った後者の方が忙しなく、"Migrant"の方は空間を残してカウベルによるアクセントとメロディアスなアレンジを実現している。しかし、Seatonがそうした要素をどのようにまとめようと、各楽曲はバランスが取れているように感じられ、楽々と展開している。 装いすべてが素晴らしく精巧に作られているにも関わらず、最終的にリスナーを惹き付けて離さないのはベースラインだ。"Migrant"を導く泡立つ音色はクラシックなLarry Heardのような、もう一度聞かない訳にはいかないほど素早くのたうち回るあの至極シンプルなシーケンスだ。"Meltintu"でもアシッド色のある跳ねたベースラインで同じことが行われているが、2小節に渡ってパターンを展開してファンキーな効果を生んでいる。「Migrant」が何故こんなにも上手くまとまっているのか。その理由は粘り気のあるローエンドや魅力的なサウンドデザインだけではない。Seatonは研ぎ澄ました素材を使って互いを補完し合い、すべての素材に共通するグルーヴを見い出しているのだ。ひけらかしたり、わざとらしく聞こえることなく、同等のものをSeatonが実現できる点は、彼が間違いなく進化を遂げているアーティストであることを物語っている。
  • Tracklist
      A1 Migrant B1 Meltintu
RA