Powell - Sylvester Stallone

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  • Oscar Powellが作るテクノは、がらくたのようなサウンドだ。比喩的な意味でそう言っているのではない。ひしゃげた金属片、ガリガリと音を立てる機械、それはまるで、ゴミ捨て場から素材を見つけてきて組み立てたトラックのように聞こえるのだ。昨年のEP「Club Music」では、そうしたスクラップを紐で括りつけて作ったキラーダンストラックがまとめられていたが、XL Recordingsからデビュー盤となる今作は、その1つ上を行っている。 "Sylvester Stallone"は、ドラム&ベースにインスパイアされたというEP「Fizz」(英語サイト)を彷彿とさせる。かの俳優が登場するアクション映画のように剛腕なトラックだ。トラックの土台となっているのはエレクトロだが、認識不可能になるまで捻じ曲げられ、どこかに行こうと焦っているかのように突如、急激な動きを見せる。荒れたトラック上に、耳をつんざく反響音、コンクリートを擦りつけたようなノイズや、ランダムに弾き出されるメロディが行き交う様は、Powellのシーケンサーがバケツで水をかけられ、壊れてしまっているかのようだ。"Smut"では、土台となるつんのめるドラムサンプルに、奇妙なサウンドエフェクトがふんだんに盛り込み、静止ノイズが少し加えられている。このトラックは「Club Music」で聴くことのできた不均衡なファンクサウンドに近い。リズムからずれた場所に打ち込まれるスネアが挿入されることで、今にも崩壊していきそうなところは、なんとも魅力的だ。どちらのトラックも荒々しく、必ずしもXL Recordingsのようなメインストリームの音楽を発表しているレーベルに期待するサウンドであるわけではない。しかし、Powellにとってこれまでで最も注目を集める12インチとなった本作では、瓦礫のようなサウンドから人々の心を掴むクラブトラックを形作るという、彼独自の才能が見事に引き立てられている。
  • Tracklist
      A1 Sylvester Stallone B1 Smut
RA